
インバース型上場投資信託が減価する仕組み
インバース型やレバレッジ型の商品を理解するうえで、最も重要なのが値動きの経路によって運用結果が変わるという点です。
これらの商品が目標とする倍率は、購入日から売却日までの合計騰落率ではなく、原則として1日ごとの騰落率に対する倍率です。2営業日以上保有すると、日々の損益が次の日の計算に組み込まれるため、複利効果によるずれが発生します。
原指標が元の水準に戻るケース
原指標が100から110へ10%上昇し、翌日に約9.09%下落して100へ戻ったと仮定します。
- 原指標:100 → 110 → 100
- マイナス2倍型:100 → 80 → 約94.5
1日目は原指標が10%上昇したため、マイナス2倍型は20%下落して100から80になります。2日目は原指標が約9.09%下落するため、マイナス2倍型は約18.18%上昇します。しかし、80に約18.18%を加えても約94.5にしかなりません。
原指標は100へ戻っているのに、ダブルインバース型は約5.5%下落した状態です。これが、上昇と下落を繰り返す相場で起こりやすい減価の代表例です。
減価は毎日一定額が差し引かれる費用ではない
減価とは、信託報酬のように一定額が機械的に差し引かれることだけを意味するものではありません。日々の変動率を基準に運用するために生じる、複利効果や値動きの経路による影響を表す言葉として使われています。
原指標が同じ方向へ連続して動く局面では、複利効果が有利に働く場合もあります。例えば、原指標が2日連続で10%ずつ下落すると、原指標の合計下落率は19%です。一方、マイナス2倍型が日々20%ずつ上昇すれば、合計上昇率は44%になります。
つまり、インバース型やレバレッジ型が必ず一定速度で下落するわけではありません。ただし、方向感のない相場や値動きの大きい相場が続くほど、長期の運用成績が当初イメージした倍率から離れやすくなります。
インバース型上場投資信託を長期保有するリスク
金融庁は、レバレッジ型・インバース型ETFについて、2日以上の期間では原指標の変動率に単純な倍率を掛けた結果にならず、中長期的に価値が逓減する可能性があるため、長期保有に適さない場合があると注意を促しています。
主なリスク
- 複利効果によるずれ:保有期間が長くなるほど、原指標の累積騰落率と目標倍率とのずれが大きくなる可能性があります。
- 価格変動リスク:ダブルインバース型やレバレッジ型は日々の値動きが大きく、短期間で大幅な損失が発生することがあります。
- 先物取引のリスク:多くの商品が先物取引を利用しており、限月を乗り換える際の影響や取引コストを受けます。
- 連動誤差:信託報酬、運用費用、売買のタイミングなどにより、連動対象の指数と完全には一致しません。
- 市場価格と基準価額のずれ:取引所の需給によって、市場価格が一口当たり純資産額より高くなったり、低くなったりすることがあります。
- 流動性リスク:売買が少ない時間帯や銘柄では、希望する価格で取引できない可能性があります。
- 急変・窓開けリスク:海外市場の急変や重要ニュースにより、翌営業日の価格が前日の終値から大きく離れる場合があります。
インバース型上場投資信託のメリット・デメリット
メリット
- 相場の下落局面でも利益を目指せる
- 空売りを使わず、現物取引で下落方向へ投資できる
- 保有株式の一時的な値下がり対策に利用できる
- 株式と同じように取引所で売買できる
- 個別企業ではなく株価指数全体の下落に備えられる
デメリット
- 相場が上昇すると損失が発生する
- 長期では想定したマイナス1倍、マイナス2倍から離れやすい
- 上下を繰り返す相場では減価しやすい
- 信託報酬や先物取引に関係する費用がかかる
- 保有資産と連動対象が異なる場合、十分な値下がり対策にならない
例えば、個別株を保有している状態で日経平均のインバース型ETFを購入しても、その個別株が日経平均と同じように動くとは限りません。また、保有資産と同額のダブルインバース型ETFを購入すると、値下がり対策が過剰になる可能性があります。
代表的なインバース型・レバレッジ型上場投資信託
2026年8月5日時点で日本取引所グループの銘柄一覧に掲載されている代表例は、次のとおりです。
日経平均インバース・インデックスの代表例
- 1571:NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信
- 1580:日経平均ベア上場投信
- 1456:iFreeETF 日経平均インバース・インデックス
日経平均ダブルインバース・インデックスの代表例
- 1357:NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信
- 1360:日経平均ベア2倍上場投信
- 1366:iFreeETF 日経平均ダブルインバース・インデックス
- 1459:楽天ETF-日経ダブルインバース指数連動型
日経平均レバレッジ・インデックスの代表例
- 1570:NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信
- 1579:日経平均ブル2倍上場投信
- 1358:上場インデックスファンド日経レバレッジ指数
- 1365:iFreeETF 日経平均レバレッジ・インデックス
- 1458:楽天ETF-日経レバレッジ指数連動型
上場状況、商品名、信託報酬、売買単位などは変更されることがあります。購入前には、日本取引所グループの最新銘柄一覧と、運用会社が作成した交付目論見書を確認することが重要です。
インバース型上場投資信託の買いタイミング
相場の底値や天井を事前に正確に判断する方法はなく、誰にでも当てはまる買いタイミングはありません。インバース型ETFは「価格が安くなったから買う」という考え方だけでは判断しにくい商品です。価格が長期間下落していても、原指標が上昇し続ければ、さらに下落する可能性があります。
購入前に決めておきたいこと
- 原指標が下落すると考える具体的な理由
- 保有する予定の日数や期間
- 予想が外れたと判断する条件
- 許容できる損失額
- 利益確定や売却を検討する水準
短期的な値下がり対策として利用する場合も、保有を続ける理由を定期的に確認する必要があります。「いつか相場が下がるはず」と保有期間を延ばすと、相場の上昇や減価によって損失が拡大するおそれがあります。
売買時に確認したい指標
- 連動対象となる原指標の値動き
- ETFの市場価格と基準価額
- リアルタイムの推定純資産価値であるiNAV
- 売り気配と買い気配の価格差
- 出来高と売買代金
- 信託報酬や総経費率
値動きが激しいときに成行注文を出すと、想定より不利な価格で成立する場合があります。指値注文を使えば価格を指定できますが、相場状況によっては取引が成立しません。また、損切り注文を設定していても、価格が大きく飛んだ場合には指定した水準で売却できないことがあります。
同じ「投資信託」という名称でも、非上場投資信託、金価格連動型ETF、JリートETFでは購入方法もリスクも異なります。混同しやすいポイントを次のページで整理します。




