ADRとは?日本株の主要銘柄・仕組み・税金・メリットをやさしく解説

ADRという言葉を見かけても、「普通の株式と何が違うのか」「日本株のADR価格は翌日の株価予想に使えるのか」「キオクシア、ソフトバンク、任天堂、フジクラ、トヨタなどにもADRがあるのか」と疑問に感じることがあります。ADRは、米国以外の企業の株式を裏付けとして、米国市場で取引できるようにした預託証券です。本記事では、ADRの基本的な仕組みから、日本企業の代表的なADR銘柄、価格の見方、メリット・デメリット、配当金と税金まで、2026年8月5日時点で確認できる情報をもとに整理します。

ADRと日本株の値動きをイメージした株価チャート
ADRは、米国市場で取引される外国企業の預託証券です。

この記事の目次

  • ADRとは何か、一般の株式との違い
  • ADRが発行・売買される仕組み
  • 日本株の主要ADR銘柄と換算比率
  • ADR価格を翌日の日本株の参考にする方法
  • ADRのメリット・デメリット
  • 配当金、税金、ADR手数料の注意点

ADRとは?外国企業の株式を米国で取引しやすくする仕組み

ADRは「American Depositary Receipt」の略称で、日本語では「米国預託証券」または「米国預託証書」と呼ばれます。

米国外の企業が発行した株式を、米国の預託銀行やその現地保管機関が保管し、その株式を裏付けとして米国で発行される有価証券です。ADRは米ドル建てで取引され、米国の証券取引所またはOTC市場で売買されます。

厳密には、ADRは証書を指し、取引単位となる権利はADS(American Depositary Share)と呼ばれます。ただし、実際の投資情報や証券会社の画面では、ADRとADSがほぼ同じ意味で使われることも少なくありません。

ADRは株そのものではないが、株式を裏付けにしている

ADRを購入しても、通常は日本企業の原株を直接保有するわけではありません。預託銀行が保管している原株に対応する権利を保有する形です。

そのため、ADRの保有者は銘柄や預託契約の条件に応じて、次のような経済的利益を受けられます。

  • 原株の株価変動に連動する値上がり益または値下がり損
  • 企業が配当を実施した場合の配当金
  • 議決権行使に関する案内や権利

ただし、議決権の行使方法、通知の時期、配当金の受取額などは、原株を直接保有する場合と完全に同じとは限りません。預託銀行の手続きやADR契約の条件が加わるためです。

ADRと一般の株式の違いをわかりやすく比較

比較項目ADR日本市場の原株
取引される場所NYSE、Nasdaq、米国OTC市場など東京証券取引所など
取引通貨主に米ドル日本株は円
保有するもの預託された原株を裏付けとする証券企業が発行した株式
取引時間主に米国市場の取引時間日本市場の取引時間
価格への主な影響原株、為替、米国市場、需給企業業績、日本市場、需給
固有の費用ADR管理手数料などが発生する場合がある通常はADR管理手数料なし

ADRには原株の価値だけでなく、円と米ドルの為替変動も反映されます。日本株の原株価格が変わらなくても、円安・ドル高になればADRのドル換算価値が動き、反対に円高・ドル安でも影響を受けます。

ADRの仕組みを4段階で理解しよう

1.企業の原株が現地で保管される

日本企業のADRであれば、東京市場などで流通する原株が、日本国内の保管機関を通じて管理されます。

2.米国の預託銀行がADRを発行する

預託銀行は、保管された原株を裏付けとしてADRを発行します。預託銀行には、BNY、Citi、JPMorgan、Deutsche Bankなどがあります。

3.米国の証券取引所またはOTC市場で売買される

発行されたADRは、NYSEなどの証券取引所、または店頭取引に当たるOTC市場で売買されます。取引価格は米ドルで表示されます。

4.配当金は預託銀行を経由して支払われる

企業が原株の配当を実施すると、預託銀行が受け取った配当を米ドルなどに換算し、必要な税金や手数料を差し引いたうえでADR保有者へ支払います。

スポンサー付きADRとアンスポンサードADRの違い

スポンサー付きADR

発行企業と預託銀行が契約を結び、企業の関与のもとで運営するADRです。NYSEやNasdaqに上場するADRの多くが該当します。情報開示や米国当局への報告について、一定の基準が設けられています。

アンスポンサードADR

発行企業が直接関与せず、預託銀行が設定するADRです。日本企業のADRでは、米国OTC市場で取引されるアンスポンサードADRが多数あります。

同じ企業について複数の預託銀行がADRを発行することもあります。また、企業が日本で上場しているからといって、その企業自身が米国上場を決定したとは限りません。

同じ「ソフトバンク」でも、ソフトバンクグループと通信会社のソフトバンクではADRの銘柄コードも換算比率も異なります。主要銘柄の違いは次のページで詳しく整理します。