
初心者向け・EPSを使った銘柄分析の手順
手順1.実績EPSと予想EPSを区別する
最初に、表示されているEPSが確定済みの実績値か、今後の予想値かを確認します。
金融情報サイトによって、会社予想、アナリスト予想、過去12か月の実績など、採用する数字が異なる場合があります。同じ企業でも掲載されるEPSが違うことがあるため、基準日と計算条件を確認しましょう。
手順2.過去5年程度の推移を見る
1年間だけでなく、複数年のEPSを確認します。
- 継続して増加しているか
- 景気によって大きく上下しているか
- 赤字と黒字を繰り返していないか
- 一度だけ極端に高い年がないか
毎年安定して成長している企業と、一時的な利益でEPSが急増した企業では、同じEPSでも意味が異なります。
手順3.EPSの増加理由を分けて考える
EPSの増加は、主に分子である利益の増加か、分母である株式数の減少によって起こります。
- 利益増加型:売上増加や利益率改善によって当期純利益が増えた
- 株式数減少型:自社株買いによって期中平均株式数が減った
- 一時利益型:資産売却益や税効果によって当期純利益が増えた
利益増加と自社株買いが同時に進んでいれば、EPSの成長率は会社全体の利益成長率より高くなる場合があります。
手順4.売上高と営業利益を確認する
EPSの基礎となる当期純利益だけでなく、売上高や営業利益を確認します。本業の売上と利益が増えていれば、EPS成長の継続性を判断する材料になります。
当期純利益だけが増え、売上高や営業利益が減っている場合は、資産売却などの特殊要因がないかを確認しましょう。
手順5.キャッシュフローを確認する
EPSは会計上の利益を使う指標です。利益が計上されていても、実際に同額の現金が増えているとは限りません。
営業キャッシュフローが継続して黒字か、売掛金や在庫が急増していないかを確認します。利益と現金収支が長期間大きく異なる場合は、その理由を調べる必要があります。
手順6.潜在株式調整後EPSを確認する
ストックオプションや転換社債を発行している企業では、基本的EPSと潜在株式調整後EPSの差を確認します。
差が大きい場合は、将来株式数が増え、1株当たり利益が薄まる可能性があります。ただし、権利が必ず行使されるとは限りません。
手順7.PERと組み合わせる
EPSが成長している企業でも、株価が利益以上に上昇していればPERは高くなります。高い成長率を市場がすでに織り込んでいる可能性があります。
同業他社のPER、過去の自社PER、予想される利益成長率などと比較して、現在の株価評価を検討しましょう。
EPSを見るときの注意点
異なる企業のEPSを金額だけで比べない
株式数や株式分割の状況が異なるため、「EPSが500円の会社は50円の会社より10倍優秀」とは判断できません。
企業間ではEPSの絶対額より、EPS成長率、PER、ROE、利益率などを組み合わせて比較します。
四半期EPSを単純に4倍しない
季節によって売上が偏る企業では、第1四半期のEPSを4倍しても年間EPSの予想にはなりません。
小売、旅行、建設、ゲームなど、特定の時期に利益が集中しやすい事業があります。前年同期との比較や会社の通期予想を確認してください。
赤字企業ではPERを計算できない
EPSがマイナスの場合は、1株当たり損失が発生しています。計算上は株価をマイナスEPSで割れますが、利益に対する株価倍率というPER本来の意味がなくなります。
金融情報画面では、PERが「-」「N/A」「算出不能」などと表示されることがあります。
EPS成長率だけで将来を予測しない
過去にEPSが高い割合で成長していても、同じ成長率が将来も続くとは限りません。市場の成熟、競争激化、為替変動、原材料費、法規制などによって利益は変化します。
会社独自の調整後EPSを法定EPSと混同しない
企業によっては、のれん償却費、株式報酬費用、一時損益などを除いた調整後EPSを公表します。
事業の継続的な収益力を見る参考になる場合がありますが、除外項目と計算方法は企業ごとに異なります。ほかの企業の調整後EPSと単純に比較できないことがあります。
EPSに関するよくある疑問
EPSは高いほどよいですか?
同じ企業で本業の成長によりEPSが継続的に増えている場合は、収益力向上の材料になります。ただし、企業間の絶対額比較や、一時的な利益による上昇には注意が必要です。
EPSがマイナスとはどういう意味ですか?
普通株式1株当たりで損失が発生している状態です。企業全体の当期純利益が赤字の場合、EPSも通常はマイナスになります。
EPSが上がると株価も同じ割合で上がりますか?
同じ割合で上がるとは限りません。株価はEPSだけでなく、PER、成長期待、金利、財務状態、市場全体の動きなどによって決まります。
自社株買いでEPSが上がれば業績も改善したのですか?
必ずしも改善したとは限りません。利益が同じでも、株式数が減ればEPSは上昇します。売上高、営業利益、当期純利益も合わせて確認してください。
株式分割でEPSが下がるのは悪材料ですか?
株式分割による機械的な低下は、通常、企業の利益悪化を意味しません。1株を複数株へ分けたことで、1株当たりの利益も分割されたためです。
EPSと配当金は同じですか?
同じではありません。EPSは1株当たりの利益、配当金は企業がその利益や内部留保などから株主へ実際に支払う金額です。
EPSに対する配当金の割合は、配当性向で確認できます。
配当性向(%)=1株当たり配当金÷EPS×100
EPS分析のチェックリスト
- 実績EPSと予想EPSを区別したか
- 期末株式数ではなく期中平均株式数が使われると理解したか
- 同じ企業の複数年の推移を確認したか
- 利益増加と株式数減少のどちらでEPSが伸びたか確認したか
- 一時的な特別利益や税効果を確認したか
- 基本的EPSと潜在株式調整後EPSを比較したか
- 売上高、営業利益、キャッシュフローも確認したか
- 株式分割の調整前後を混同していないか
- PERやROEなど別の指標と組み合わせたか
- 過去のEPSが将来の利益を保証しないと理解したか
まとめ:EPSは金額の高さより成長の中身が重要
EPSとは、企業が普通株式1株当たりでどれだけの利益を生み出したかを示す指標です。基本的な計算式は、普通株式に係る当期純利益を期中平均普通株式数で割る形です。
EPSが高いほど1株当たり利益は大きくなりますが、すべての企業に共通する目安はありません。株式数、株価、株式分割の状況が異なるため、異なる企業のEPSを金額だけで比べることは適切ではありません。
EPSを分析するときは、過去からの成長、利益の継続性、自社株買い、新株発行、一時損益、潜在株式の影響を確認しましょう。さらに、株価をEPSで割るPERを使うことで、利益に対する現在の株価水準を確認できます。
日経平均EPSは、日経平均構成銘柄の予想EPSを株価換算係数と除数を使って指数化した数字です。個別企業のEPSを単純平均したものではありません。
本記事は、EPSや株式投資に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の企業、銘柄、金融商品、売買方法を推奨するものではありません。株式投資には価格変動、業績、信用、流動性などのリスクがあり、元本割れが発生する可能性があります。実際の取引では、企業の決算短信、有価証券報告書、適時開示、金融機関が提供する契約締結前交付書面、手数料、リスク説明を確認し、ご自身の資産状況、投資経験、目的、損失許容度に基づいて判断してください。
<参考サイト>
企業会計基準委員会(ASBJ) / 日本取引所グループ(JPX) / 日経平均プロフィル(日本経済新聞社) / 金融庁 / IFRS Foundation



