EPSとは?計算方法・目安・PERとの違い・株価への影響を初心者向けに徹底解説

EPSが高い・低いとはどういう意味?

基本的には、EPSが高いほど普通株式1株当たりの利益が大きく、低いほど1株当たりの利益が小さいことを表します。

ただし、EPSの絶対額だけを見て、異なる企業の優劣を判断することはできません。発行株式数、株価、事業内容、株式分割の状況などが企業ごとに異なるためです。

EPSが高くなる主な理由

  • 本業の売上や利益が増えた
  • 利益率が改善した
  • 自社株買いによって株式数が減少した
  • 保有資産の売却などで一時的な利益が発生した
  • 税負担が一時的に減少した

本業の成長によってEPSが高くなった場合は、収益力向上の材料になります。一方、資産売却益や税金の特殊要因によって上昇した場合は、翌期に同じ利益が発生するとは限りません。

EPSが低くなる主な理由

  • 売上や利益が減少した
  • 原材料費や人件費が増加した
  • 特別損失や減損損失が発生した
  • 新株発行によって株式数が増えた
  • 企業買収などに伴う費用が発生した

EPSが低下していても、将来の成長に必要な研究開発や設備投資が原因である場合があります。数字が低下した理由まで確認することが重要です。

EPSに絶対的な目安はない

EPSには、「何円以上なら優良企業」といった共通の目安はありません。100円のEPSが高いか低いかは、株価、過去のEPS、同業他社、利益の成長率などによって変わります。

例えば、次の2社を比べてみましょう。

項目A社B社
株価3,000円600円
EPS150円60円
PER20倍10倍

A社のEPSはB社より高いものの、利益に対する株価はA社のほうが高く評価されています。EPSだけでは、どちらが割安かを判断できません。

EPSの比較で有効な3つの方法

  • 過去との比較:同じ企業のEPSが継続的に伸びているかを見る
  • 同業他社との比較:似た事業を行う企業の成長率や利益の質と比べる
  • 株価との比較:PERを使い、利益に対する株価水準を確認する

異なる企業のEPSを金額だけで比較するより、数年間の成長率や安定性を確認するほうが有効です。

EPSとPERの違い

EPSとPERは深く関係していますが、示す内容は異なります。

項目EPSPER
正式名称Earnings Per SharePrice Earnings Ratio
日本語1株当たり利益株価収益率
単位円などの通貨倍
計算式利益÷期中平均株式数株価÷EPS
示す内容1株当たりの収益力利益に対する株価水準

PERの計算式

PER(倍)=株価÷EPS

株価が2,000円、EPSが100円なら、PERは20倍です。

2,000円÷100円=20倍

現在の株価が1年間の1株当たり利益の20倍に相当することを示します。

株価をEPSとPERに分解する考え方

PERの計算式を変形すると、次の関係になります。

株価=EPS×PER

この式は、株価が1株当たり利益と、市場が付ける評価倍率によって構成されていることを理解するのに役立ちます。

例えば、EPSが100円でPERが15倍なら、計算上の株価は1,500円です。EPSが120円へ増え、PERが15倍のままなら1,800円になります。

ただし、実際のPERは成長期待、金利、財務リスク、市場心理などによって変化します。EPSが増加しても、PERが低下すれば株価が上昇しない場合があります。

EPSが株価へ与える影響

株価は将来の利益予想を織り込みながら動くため、EPSの実績そのものより、事前予想との差や今後の見通しが重視されることがあります。

EPSが増えて株価が上がる場合

企業の利益が市場予想を上回り、将来も成長が続くと判断されれば、予想EPSが引き上げられ、株価が上昇する可能性があります。

特に、売上増加や利益率改善など、本業の成長を伴うEPS増加は、継続性が期待されやすくなります。

EPSが増えても株価が下がる場合

決算でEPSが前年を上回っていても、次のような場合は株価が下落することがあります。

  • 市場がさらに高いEPSを予想していた
  • 会社が次期の減益予想を発表した
  • 一時的な資産売却益による増加だった
  • 売上や営業利益が悪化していた
  • 発表前に株価が大きく上昇していた

株価の反応を見るときは、前年同期比だけでなく、市場予想や会社計画との比較が必要です。

EPSが減っても株価が上がる場合

EPSが減少しても、減少幅が予想より小さい場合や、悪材料がすでに株価へ反映されていた場合は、株価が上昇することがあります。

株価は過去の利益ではなく、将来の利益予想と市場の期待との差に反応することが多いためです。

EPSを変化させる利益以外の要因

自社株買い

企業が自社株を取得すると、EPS計算の分母となる株式数が減少します。利益が変わらなくても、1株当たり利益が上昇する場合があります。

例えば、純利益が100億円、期中平均株式数が1億株ならEPSは100円です。株式数が8,000万株になれば、純利益が同じでもEPSは125円になります。

100億円÷8,000万株=125円

ただし、自社株買いに多額の資金を使うことで、成長投資や財務の余力が減る可能性もあります。EPS上昇の理由を確認しましょう。

新株発行

増資や新株予約権の行使によって普通株式数が増えると、利益が同じ場合はEPSが低下します。これを1株当たり利益の希薄化と呼びます。

一方、新株発行で得た資金を成長投資へ使い、将来の利益が株式数の増加以上に伸びれば、中長期的にEPSが上昇する可能性があります。

株式分割

1株を2株に分割すると株式数は2倍になり、EPSは計算上おおむね半分になります。しかし、企業全体の利益や価値が半分になったわけではありません。

株式分割が行われた場合、過去のEPSも分割後の株式数に合わせて調整して表示されることがあります。分割調整前と調整後の数字をそのまま比較しないようにしましょう。

一時的な特別利益・特別損失

土地や有価証券の売却益が発生すると、当期純利益とEPSが一時的に増加する場合があります。反対に、減損損失などが発生するとEPSが急低下することがあります。

一時的な損益を除いた「調整後EPS」を独自に公表する企業もあります。ただし、調整後EPSの定義は企業ごとに異なるため、法定開示のEPSとの調整内容を確認してください。

日経平均EPSとは?

日経平均EPSは、日経平均株価を構成する225銘柄の予想1株利益を、日経平均の算出方法に合わせて集計した指標です。各社のEPSを単純に足して225で割った数字ではありません。

日経平均プロフィルのユーザーズ・ガイドでは、指数ベースの日経平均EPSを次の考え方で算出しています。

日経平均EPS=Σ(各構成銘柄の予想1株利益×株価換算係数)÷日経平均の除数

指数ベースの日経平均PERは、次の式で計算されます。

日経平均PER=日経平均株価÷日経平均EPS

計算には日本経済新聞社の予想利益が使われ、本決算発表日の翌日から次の決算期の予想へ切り替わります。

日経平均EPSからわかること

  • 日経平均構成企業全体の予想利益の方向
  • 日経平均株価の上昇が利益成長を伴っているか
  • 日経平均PERが変化した理由

日経平均株価が変わらないまま日経平均EPSが増加すれば、日経平均PERは低下します。反対に、EPSが減少すれば、株価が同じでもPERは上昇します。

日経平均EPSは225社全体を指数の方式で集計した数字です。個別銘柄のEPSや、東証上場企業全体の利益を示すものではありません。

実は、EPSが伸びていても、利益の中身や株式数の変化を確認しなければ企業の実力を誤って判断します。次のページでは、決算資料での実践的な確認手順と注意点を解説します。