私募とは?公募との違い・私募債・私募ファンド・私募REIT・税金までわかりやすく解説

「私募」とは、株式・社債・ファンドなどの有価証券を、不特定多数へ広く募集するのではなく、一定の範囲の投資家を対象として取得を勧誘する方法です。「私募債は銀行借入と何が違う?」「私募ファンドには誰でも投資できる?」「銀行保証付私募債の審査は厳しい?」「私募を使えば節税できる?」など、制度・投資・資金調達・税務が混在しやすいテーマでもあります。本記事では2026年9月10日時点の金融庁、日本証券業協会、国税庁、不動産証券化協会、証券保管振替機構、金融機関等の公表情報を確認し、私募の基本から私募債の金利・手数料、私募REITのリスク、税務まで中立的に解説します。

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この記事の目次

  • 私募とは?読み方と意味
  • 私募と公募の違い
  • 少人数私募・プロ私募・特定投資家私募
  • 私募債とは?仕組みとメリット・デメリット
  • 私募債と銀行借入の違い
  • 銀行保証付私募債の審査・発行条件
  • 私募債の金利・発行手数料
  • 私募債と「ほふり」の関係
  • 私募ファンドの投資資格・条件
  • 私募REITとJ-REITの違い
  • 私募を利用した節税は可能?
  • 私募ファンドの税金・確定申告
  • 私募債の勘定科目・会計処理

私募とは?読み方は「しぼ」

私募は「しぼ」と読みます。日本証券業協会では、有価証券の取得勧誘のうち「募集」に該当しないものを私募と説明しています。

簡単にいうと、不特定多数の投資家へ広く販売する「公募」に対して、投資家の人数や属性など一定の条件を満たした限定的な勧誘を行うのが私募です。

ただし、「知り合いだけに売れば全部私募」「49人までならどんな売り方でも自由」という意味ではありません。金融商品取引法では勧誘人数、投資家の属性、転売制限、過去の勧誘との通算など細かな要件が定められています。

私募と公募の違いをわかりやすく比較

比較項目私募公募
主な対象一定範囲の投資家不特定多数の投資家
代表例少人数私募、適格機関投資家私募、特定投資家私募一般投資家を広く対象とする株式・社債等の募集
情報開示私募の種類に応じて公募より簡素化される一定の場合、有価証券届出書等が必要
投資家層少数の関係者、機関投資家、プロ投資家等個人を含む幅広い投資家
流動性譲渡制限等により低くなる場合がある上場商品などは売買しやすいものもある

金融庁は、一般投資家50人以上を対象とする一定の有価証券の取得勧誘を「募集」とする一方、募集に該当しない勧誘として、少人数私募、適格機関投資家私募、特定投資家私募などを設けています。

私募に該当する場合、原則として私募であることを理由に有価証券届出書の提出が不要になる仕組みがあります。ただし、特定投資家私募では特定証券情報の提供・公表が求められるなど、それぞれ条件が異なります。

少人数私募とは?「49人以下」という数字だけでは判断できない

少人数私募は、一般に50人未満の者を対象とする取得勧誘です。そのため「49人以下」と説明されることが多くあります。

しかし、同種の有価証券について一定期間内に複数回の勧誘を行った場合などには、過去の勧誘人数を通算して判断するルールがあります。また、多数の者へ転売されるおそれが少ないことなど、人数以外の条件もあります。

同じ会社が「毎回49人ずつ募集すれば、何度繰り返しても私募になる」と考えるのは適切ではありません。金融庁・証券取引等監視委員会でも、少人数私募の要件を満たさない無届募集について注意が示されています。

適格機関投資家私募とは?

銀行、保険会社、一定の金融商品取引業者など、金融商品取引法上の要件を満たす「適格機関投資家」を対象とした私募があります。一般にプロ私募とも呼ばれます。

投資判断に必要な専門知識や経験を持つ投資家に対象を限定することで、一般投資家向けの公募とは異なる開示制度が採られています。

特定投資家私募とは?

金融商品取引法上の「特定投資家」を対象に行う私募もあります。適格機関投資家より広いプロ投資家制度ですが、誰でも希望すれば無条件で特定投資家になれるわけではありません。

法人・個人の区分や資産・取引経験等によって扱いが異なるため、実際の投資可否は金融商品取引業者やファンドの募集条件を確認する必要があります。

私募債とは?少数の投資家向けに発行する社債

私募債(しぼさい)とは、不特定多数へ募集する公募債とは異なり、少数の特定投資家などを対象として発行する社債です。

三菱UFJ銀行も、私募債を「少数の特定の投資家を対象として発行される社債」と説明し、有価証券届出書等を作成する公募債に比べ、発行手続を簡素化できることを特徴として挙げています。

私募債の仕組み

会社が1億円の私募債を発行する単純な例なら、投資家や引受金融機関等から会社へ1億円が払い込まれます。会社は契約条件に従って利息を支払い、満期には元本を償還します。

発行企業
↓ 私募債を発行
投資家・引受金融機関等
↓ 発行代金を払い込む
発行企業
↓ 所定の利息を支払い、満期に元本を償還

株式を発行して資本金を増やす方法とは異なり、社債は原則として返済が必要な負債です。

私募債と銀行借入の違い|どちらも返済義務はある

比較項目私募債銀行借入
法律上の形社債を発行して資金調達金銭消費貸借契約等による借入れ
資金提供者社債投資家・金融機関等銀行等
返済償還日に元本を返済。定時償還型もある契約に基づき分割返済・一括返済等
利息社債利息を支払う借入金利息を支払う
発行・契約コスト保証料・発行事務費等が発生する場合がある融資手数料・保証料等が発生する場合がある

私募債は「直接金融の一手法」と説明されますが、銀行保証付私募債では銀行が保証・事務代行・引受など重要な役割を担うことがあります。そのため、実務では銀行借入に近い関係性を持つ私募債もあります。

どちらが有利かは、金利だけでは判断できません。発行費用、保証料、返済・償還方法、資金調達期間、担保条件などを含めた総コストで比較する必要があります。

私募債のメリット

長期・固定金利で調達できる商品がある

銀行保証付私募債などには、数年間の固定金利で資金調達できる商品があります。三菱UFJ銀行では2~10年程度の期間から選択できる私募債を案内しています。

群馬銀行も銀行保証付等の私募債について、長期固定金利による安定した資金調達を特徴として挙げています。

資金調達手段を分散できる

銀行借入だけに依存せず、社債発行という別の調達手段を持てます。将来の資金需要に備えて調達手段を複数確保したい企業には一つの選択肢です。

無担保・無保証人の商品もある

銀行保証付私募債や信用保証協会保証付私募債には、商品条件上、無担保・無保証人で利用できるものがあります。ただし、発行会社に対する審査が不要になるわけではありません。

私募債のデメリット

  • 発行時に金融機関所定の審査を受ける商品がある
  • 利息だけでなく保証料・発行関係手数料等が発生する場合がある
  • 満期一括償還では償還時にまとまった資金が必要になる
  • 少人数私募などでは転売に関する制限がある
  • 社債管理・決済などの事務が必要になる
  • 銀行借入より必ず低コストになるとは限らない

特に満期一括償還型では、毎月元本を返す借入れとは資金繰りが異なります。満期直前に償還資金を慌てて準備することがないよう、中長期の資金計画が必要です。

私募債は銀行融資と違って「金利だけ見ればよい」商品ではありません。実際の負担を左右する保証料・発行費用と、銀行保証付私募債の審査の仕組みを次のページで確認します。