株式公開買付(TOB)とは?株価・応募方法・税金・上場廃止までわかりやすく解説

株式公開買付の税金|TOB利益は雑所得ではない

個人が保有する上場株式を通常の第三者によるTOBへ応募して売却した場合、その利益は原則として上場株式等に係る譲渡所得等として扱われます。

一般的な給与所得と合算する雑所得ではありません。

2026年の基本税率は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%です。

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%
  • 住民税:5%

TOB利益の計算例

例えば、

  • 取得価格:1株1,000円
  • 保有数:1,000株
  • TOB価格:1株1,500円
  • 説明を簡単にするため手数料等は考慮しない

とします。

売却代金は、

1,500円 × 1,000株=150万円

取得費は、

1,000円 × 1,000株=100万円

したがって譲渡益は、

150万円-100万円=50万円

です。

単純に20.315%を掛けると、

50万円 × 20.315%=101,575円

となります。

実際には購入時の手数料、売却に関する費用、他の株式の損益などによって課税所得が変わる場合があります。

TOBで確定申告は必要?

確定申告が必要かどうかは、株式をどの口座で管理し、どの方法でTOBへ応募したかなどによって異なります。

国税庁の特定口座制度では、源泉徴収ありの特定口座内で処理される上場株式等の譲渡益については、原則として確定申告をしないことも選択できます。

一方、TOBへの応募にあたって株式を別の証券会社へ移管した場合などは、取得価額の引継ぎや特定口座内での取扱いを確認する必要があります。

一般口座となった場合などには、自分で譲渡益を計算して確定申告が必要になることがあります。

TOBだから無条件で申告不要になるわけではありません。公開買付代理人から交付される資料と、利用口座の種類を確認しましょう。

TOBの損失は損益通算できる?

通常の第三者TOBによる上場株式等の譲渡で損失が生じた場合には、要件を満たせば他の上場株式等の譲渡益と損益通算できます。

また、確定申告により、申告分離課税を選択した一定の上場株式等の配当所得等と損益通算できる場合があります。

それでも控除しきれない対象損失については、所定の確定申告を行うことで翌年以後3年間の繰越控除を利用できる場合があります。

自己株式の公開買付とは?会社自身が自社株を買うTOB

TOBは他社を買収するときだけに使われる制度ではありません。

自己株式の公開買付けとは、株式を発行している会社自身が、自社の株主へ公開買付けを実施して自社株を取得する方法です。

例えば上場会社A社が、

「A社株式を1株1,500円で500万株まで買い付けます」

と株主へ提示するケースです。

目的としては、資本政策、株主還元、大株主が保有する株式の取得など、案件によってさまざまです。

自己株式公開買付の税金は通常TOBと同じ?

必ずしも同じではありません。

通常の第三者TOBでは、株式を別の会社等へ譲渡するため、基本的には株式譲渡損益の問題になります。

一方、発行会社自身が自己株式を取得する場合には、株主が受け取る対価の一部が税法上の「みなし配当」となることがあります。

国税庁によると、自己株式取得によって株主が交付を受ける金銭等については、資本金等の額に対応する一定部分を超える金額がみなし配当となり、それを除いた部分が株式等の譲渡所得等に係る収入金額となる仕組みがあります。

そのため、

「自己株式TOB価格-自分の株式取得価格=全部が譲渡益」

と単純に計算できない場合があります。

自己株式TOBへ応募する場合は、発行会社・公開買付代理人が公表している税務上の取扱いを確認し、必要に応じて税理士・税務署へ確認してください。

株式公開と上場の違い|普段の意味ではIPOを指すことが多い

「株式公開」と「株式公開買付」はまったく別の言葉です。

日本取引所グループでは、一般的な証券市場の用語として、会社が初めて証券取引所へ上場して株式を広く投資家が売買できるようにすることを株式公開(IPO)と説明しています。

言葉意味
株式公開・IPO一般には株式を証券取引所へ新規上場すること
株式上場証券取引所で株式を売買できる状態にすること
株式公開買付・TOB買付価格・期間等を公表して株主から株式を買い集めること
株式非公開化上場廃止などによって公開市場で売買されない状態へ移行すること

そのため証券市場の一般的な会話では、「株式公開」と「IPO・新規上場」はほぼ同じ文脈で使われています。

会社法の「公開会社」は上場会社とは意味が違う

さらに注意したいのが、会社法における「公開会社」という用語です。

会社法上の公開会社は、発行する全部の株式について譲渡による取得に会社の承認を必要とする旨の定款の定めを置いていない株式会社を指します。

これは証券取引所に上場しているかどうかとは別の法律上の分類です。

つまり、

  • 上場会社は一般に会社法上の公開会社
  • しかし会社法上の公開会社だから必ず上場しているとは限らない

という関係です。

「株式公開」「上場」「会社法上の公開会社」は似た言葉ですが、厳密には意味が異なります。

株式非公開会社の株主は株を売れない?

上場していない会社でも株主は存在します。

ただし非上場株式には証券取引所で日々売買できる市場がないため、上場株式より売却相手を見つけにくい場合があります。

さらに株式に譲渡制限が設定されていれば、譲渡に会社の承認が必要となる場合があります。

非公開・非上場だから株式の価値がゼロになるわけではありません。会社の利益、純資産、将来性などによって経済的価値を持つ可能性があります。

TOBによる株式非公開化で少数株主が確認したいこと

完全子会社化を目的とするTOBが発表された場合、株主は単に公開買付価格を見るだけでなく、次の項目まで確認することが重要です。

  • 対象会社の取締役会が賛同・反対・中立のどれか
  • 応募推奨の有無
  • 公開買付価格の算定根拠
  • 直前株価・一定期間平均株価へのプレミアム
  • 第三者算定機関の評価
  • 特別委員会を設置しているか
  • 最低応募株数
  • TOB後の上場維持・廃止方針
  • スクイーズアウト方法
  • 応募しない株主への金銭交付予定

対象会社の「公開買付けに関する意見表明」には、株主が判断するための重要な情報がまとめられています。

TOB価格が高ければ必ず応募したほうがいい?

すべての株主に共通する正解はありません。

TOB価格、市場価格、買収成立確率、上場廃止の予定、税金などを比較して判断する必要があります。

例えば市場価格が公開買付価格を上回っているなら、市場売却のほうが高い価格で売れる場合があります。一方、市場価格がTOB価格より低い場合でも、差額が小さければすぐ売却して資金を利用することを選ぶ株主もいます。

また、TOBが上場維持型なら応募せず株主を続ける選択肢もあります。

株式公開買付についてよくある誤解

「TOB発表後は株価が必ずTOB価格になる」

必ずではありません。不成立リスクなどからTOB価格を下回る場合もあれば、対抗買収などへの期待から上回る場合もあります。

「TOB価格には法律で30%のプレミアムが必要」

そのような固定基準はありません。2026年の「30%」は公開買付規制に関する株券等所有割合の基準であり、TOBプレミアム率ではありません。

「TOBが発表されたら上場廃止は確定」

TOBが不成立になる場合もあり、そもそも上場維持を前提としたTOBもあります。

「TOBへ応募しないと株式が無価値になる」

非公開化案件では、スクイーズアウトによって最終的に金銭が交付されるケースが一般的です。ただし、時期・方法は案件ごとに異なります。

「TOBの利益は雑所得」

通常の上場株式の第三者TOBなら、原則として上場株式等に係る譲渡所得等です。2026年の基本税率は20.315%です。

「自己株式TOBも税金はまったく同じ」

自己株式取得ではみなし配当が生じる場合があり、通常の第三者TOBとは税務処理が異なることがあります。

「敵対的TOBは違法」

対象会社の経営陣が反対していることだけで違法になるわけではありません。金融商品取引法その他の法令に従って手続きを行う必要があります。

TOBが発表された株主のチェックリスト

  • 公開買付者は誰か
  • 公開買付価格はいくらか
  • 現在の市場株価はいくらか
  • TOBプレミアムは何%か
  • 対象会社は賛同しているか
  • 対象会社は応募を推奨しているか
  • 公開買付期間はいつまでか
  • 公開買付代理人はどの証券会社か
  • 移管手続が必要か
  • 買付予定数の下限・上限はあるか
  • 完全子会社化を予定しているか
  • TOB後に上場廃止となる予定か
  • 応募しなかった場合のスクイーズアウト方法は何か
  • 特定口座・一般口座のどちらで処理されるか
  • 自己株式TOBならみなし配当の有無を確認したか

まとめ|TOBは「価格」だけでなく成立条件・上場廃止・税金まで確認

株式公開買付(TOB)とは、買付者が価格、期間、買付数量などをあらかじめ公表したうえで、株主から株式等を買い付ける制度です。企業買収、子会社化、非公開化、MBO、自己株式取得などさまざまな目的で利用されます。

2026年5月1日から日本の公開買付制度は大きく改正され、従来の「3分の1ルール」は原則30%へ引き下げられ、取引所の立会内取引についても30%ルールの規制対象へ拡大されました。古い解説だけを参考にしないことが重要です。

TOB発表後の株価は公開買付価格へ近づくことがありますが、必ず同額になるわけではありません。不成立リスクがあればTOB価格より低く、対抗買収や価格引上げへの期待があればTOB価格を上回ることもあります。

TOBプレミアムにも法律上の固定割合はありません。「30%ルール」の30%と「30%のTOBプレミアム」を混同しないようにしましょう。

TOBへ応募する場合は、公開買付代理人を通じた手続が必要です。他社の証券口座で保有していれば株式移管が必要になるケースもあるため、終了期限より余裕をもって確認することが大切です。

完全子会社化を目的とするTOBでは、成立後に株式併合などのスクイーズアウト手続を経て上場廃止となる場合があります。TOBへ応募しなかった株主も、一般的にはその後の手続で株式を現金化されるケースが多いものの、時期や方法は案件ごとに異なります。

税金について、通常の第三者による上場株式TOBの利益は原則として雑所得ではなく、上場株式等に係る譲渡所得等です。2026年の基本税率は20.315%です。一方、自社が自社株を買い取る自己株式公開買付では、受取金額の一部がみなし配当になる場合があります。

TOBが発表されたら「株価が上がったからすぐ売る」「TOB価格が高いから必ず応募する」と一つの情報だけで決めず、公開買付価格、市場価格、成立条件、対象会社の意見、上場廃止予定、スクイーズアウト、税金まで確認したうえで判断することが重要です。

※本記事は2026年9月10日時点で確認した金融商品取引法、会社法、税制、金融庁・経済産業省・日本取引所グループ・国税庁・証券会社等の公表情報を基にした一般的な情報提供を目的としています。特定銘柄への投資、TOBへの応募または市場売却を推奨するものではありません。公開買付価格、期間、上場廃止予定、税務上の取扱い等は案件ごとに異なります。実際の応募前には公開買付届出書、対象会社の意見表明、証券会社の応募要領をご確認ください。税務については税務署・税理士、法的判断については弁護士等へご確認ください。

<参考サイト>
金融庁 / EDINET / e-Gov法令検索 / 経済産業省 / 日本取引所グループ / 国税庁 / 日本証券業協会 / 野村證券