
委託保証金とは、株式の信用取引を行う際に、投資家が証券会社へ担保として差し入れる現金や有価証券です。信用取引では預けた保証金を上回る金額を取引できるため、株価が予想と反対へ動くと、保証金率が急低下して追証が発生することがあります。また、証券会社の画面に「委託保証金現金0円」やマイナスと表示されても、必ずしも同じ状態を意味するわけではありません。本記事では、委託保証金の仕組み、現金と代用有価証券の違い、保証金率・維持率の計算、追証、引き出し、保証金率引き上げ、SBI証券の表示、勘定科目まで初心者向けに解説します。

この記事の目次
- 委託保証金の意味と役割
- 委託保証金現金と代用有価証券の違い
- 委託保証金率・維持率の計算方法
- 追証が発生する仕組みと解消方法
- 委託保証金現金が0円・マイナスになる理由
- 安全な保証金率の考え方
- 保証金率の引き上げと増担保規制
- 委託保証金を引き出す条件
- 委託保証金の勘定科目と会計処理
委託保証金とは?信用取引のために差し入れる担保
委託保証金とは、信用取引で株式を買ったり売ったりするために、投資家が証券会社へ差し入れる担保です。「いたくほしょうきん」と読みます。
信用取引では、投資家が証券会社から買付資金や売却する株式を借りて取引します。証券会社は、貸し付けた資金や株式を回収できないリスクに備えるため、投資家から委託保証金を受け入れます。
- 信用買い:証券会社から買付資金を借りて株式を購入する
- 信用売り:証券会社から株式を借りて売却する
- 委託保証金:借りた資金や株式に対する担保
委託保証金は取引手数料ではありません。取引を決済し、金利、貸株料、売買損失などの債務を精算した後に残額があれば、原則として返還や引き出しが可能な資産です。
新規建てに必要な委託保証金
東京証券取引所における通常の国内信用取引では、新規取引の約定価額に対して30%以上、かつ最低30万円の委託保証金が必要です。
例えば、100万円分の信用取引を行う場合、通常基準では30万円以上の保証金が必要になります。
100万円×30%=30万円
200万円分を新規建てする場合は、通常基準では60万円以上です。
200万円×30%=60万円
ただし、証券会社は取引所基準より高い保証金率を設定できます。また、レバレッジ型・ダブルインバース型のETFやETN、一部の規制銘柄などでは、通常より高い保証金率や現金保証金が必要です。
委託保証金現金とは?
委託保証金現金とは、信用取引の担保として証券会社へ差し入れられている現金部分です。
証券口座に現金が入っていても、そのすべてが委託保証金現金として表示されるとは限りません。現物株式の買付代金、出金予約、受渡未到来の取引などに使われる予定の現金は、別の項目として管理される場合があります。
預り金との違い
預り金は、証券口座内にある現金全般を表すために使われる項目です。一方、委託保証金現金は、そのうち信用取引の担保として計算される部分です。
| 項目 | 主な意味 |
|---|---|
| 預り金 | 証券口座で保有する現金や受渡しに使用する現金 |
| 委託保証金現金 | 信用取引の担保として計算されている現金 |
| 代用有価証券 | 現金の代わりに担保として利用する株式など |
| 実質保証金 | 現金と代用評価額から評価損や費用などを調整した金額 |
項目名や資金の振替方法は証券会社によって異なります。画面上の預り金だけで信用建余力を判断せず、委託保証金率や実質保証金も確認しましょう。
委託保証金は現金と代用有価証券で差し入れられる
委託保証金は、現金だけでなく、証券会社が認める株式や投資信託などを使って差し入れることができます。現金の代わりに使用する金融商品を代用有価証券と呼びます。
代用有価証券は時価の全額では評価されない
代用有価証券には価格変動があるため、時価へ「掛目」を掛けた金額で評価します。上場株式の標準的な掛目は時価の80%以下です。
時価50万円の上場株式を、掛目80%で評価する場合は次のとおりです。
代用評価額=50万円×80%=40万円
時価が40万円へ下落すると、代用評価額は32万円になります。
40万円×80%=32万円
信用建玉に評価損がなくても、担保にした現物株が下落するだけで委託保証金率が低下します。
証券会社は掛目を引き下げられる
取引所が定める掛目は評価の上限です。証券会社は、銘柄の流動性、信用状態、株価変動などを考慮して、掛目を60%や0%へ引き下げることがあります。
掛目が80%から60%へ変更されると、株価が変わっていなくても代用評価額は減少します。担保として利用している銘柄について、掛目変更の案内が出ていないか確認する必要があります。
代用有価証券には二重の価格変動リスクがある
現物株を担保にして信用買いを行うと、相場下落時に次の2つが同時に発生する可能性があります。
- 信用建玉の評価損が増える
- 担保にした現物株の代用評価額が下がる
特に、同じ銘柄や値動きが似た業種へ集中すると、委託保証金率が急速に低下する場合があります。代用有価証券を使えば現金を温存できますが、担保自体が値下がりする点に注意が必要です。
委託保証金率の計算方法
委託保証金率は、信用建玉の金額に対して、実質的な保証金がどの程度あるかを示す割合です。
委託保証金率(%)=実質保証金÷建玉代金合計×100
実質保証金の一般的な考え方は次のとおりです。
実質保証金=委託保証金現金+代用有価証券評価額-諸経費-建玉評価損±受渡未到来の決済損益
証券会社によって、費用、決済益、銀行口座の自動連携残高などの扱いが異なります。実際の判定には、利用する証券会社が表示する保証金率を確認してください。
評価益は保証金へ加算されない場合がある
国内の信用取引では、建玉全体に評価益があっても、その評価益を実質保証金へ加算しない計算が一般的です。一方、評価損は保証金から差し引かれます。
そのため、含み益がある建玉を保有していても、画面上の委託保証金率が想像ほど高くならない場合があります。
委託保証金率の計算例
次の条件で100万円の信用建玉を保有している例を考えます。
- 委託保証金現金:20万円
- 代用有価証券の時価:20万円
- 代用掛目:80%
- 建玉評価損:0円
- 諸経費:計算をわかりやすくするため0円
代用有価証券の評価額は16万円です。
20万円×80%=16万円
実質保証金は36万円、委託保証金率は36%です。
(20万円+16万円)÷100万円×100=36%
その後、代用有価証券の時価が15万円へ下落し、信用建玉に13万円の評価損が発生したとします。
代用評価額=15万円×80%=12万円
実質保証金=20万円+12万円-13万円=19万円
委託保証金率=19万円÷100万円×100=19%
追証判定水準が20%の証券会社であれば、委託保証金率が20%を下回ったため、追加保証金が必要になる可能性があります。
委託保証金率と委託保証金維持率の違い
委託保証金維持率は、建玉を保有し続けるために必要な保証金の割合を表す言葉です。証券会社の画面では、「委託保証金率」「保証金維持率」「維持率」などの名称が使われます。
多くの場合、計算の基本は実質保証金を建玉代金で割る方法です。ただし、次の数値は区別する必要があります。
| 数値 | 主な役割 |
|---|---|
| 新規建て保証金率 | 新たに信用取引を始めるために必要な割合 |
| 信用建余力の判定率 | 追加の新規建てができるかを判断する割合 |
| 追証判定率 | 下回ると追加保証金が必要になる割合 |
| 強制決済に関する基準 | 未解消時や急落時の処理に使われる基準 |
通常の新規建てに必要な30%と、追証が発生する維持率は同じとは限りません。国内信用取引では、20%未満を追証判定の水準としている証券会社がありますが、より高い基準を設ける会社もあります。




