手形とは?仕組み・手形割引・不渡り・60日ルール・2027年の廃止までわかりやすく解説

手形貸付とは?売上代金として受け取る手形とは別物

手形貸付とは、企業が銀行から融資を受ける際に、借用証書の代わりなどとして借入人自身が銀行を受取人とする約束手形を振り出す融資方式です。

例えば企業が短期運転資金として1,000万円を銀行から借りる際、企業を振出人、銀行を受取人とする約束手形を差し入れる形があります。

取引先から売上代金として受け取った商業手形を銀行へ売却する「手形割引」とは異なります。

項目手形貸付手形割引
基本的な目的銀行から資金を借りる受け取った商業手形を期日前に資金化する
使う手形借入人自身が銀行へ振り出す手形取引先から受け取った手形
主な利用場面短期運転資金など売掛代金の早期資金化など

手形貸付も2026年に廃止?全国一律ではない

「2026年9月30日になれば、法律によって全国すべての手形貸付が一斉廃止になる」という制度ではありません。

ただし、紙の手形・小切手の利用終了を受けて、銀行ごとに手形貸付を終了したり、証書貸付・当座貸越・電子契約へ移行したりする動きが進んでいます。

例えば、りそな銀行などのりそなグループでは、手形貸付の取扱いを2025年9月30日で終了しています。

みずほ銀行では、2027年4月1日以降を期日とする手形貸付の新規実行を停止する対応をすでに実施しています。

一方、2026年6月時点でも手形貸付を取扱業務として公表している金融機関もあります。

したがって、手形貸付の終了時期については利用中の金融機関ごとに確認する必要があります。

手形には印紙が必要?約束手形は印紙税の課税文書

紙の約束手形・為替手形は、印紙税法上の第3号文書に該当します。

国税庁が2026年4月1日現在の法令等に基づいて公表している一般的な約束手形・為替手形の印紙税額は次のとおりです。

手形に記載された金額印紙税額
10万円未満非課税
10万円以上100万円以下200円
100万円超200万円以下400円
200万円超300万円以下600円
300万円超500万円以下1,000円
500万円超1,000万円以下2,000円
1,000万円超2,000万円以下4,000円
2,000万円超3,000万円以下6,000円
3,000万円超5,000万円以下10,000円
5,000万円超1億円以下20,000円
1億円超2億円以下40,000円
2億円超3億円以下60,000円
3億円超5億円以下100,000円
5億円超10億円以下150,000円
10億円超200,000円

一定の一覧払手形、金融機関相互間の手形、外国通貨表示の手形などには別の取扱いがあります。

また、手形金額の記載がない手形は振出時点では非課税ですが、後から金額を補充した場合には、その補充をした者が手形を作成したものとみなされるルールがあります。

2022年に「手形交換所」がなくなったのに、なぜ2027年にも廃止?

ここは混同しやすいポイントです。

従来は、金融機関が紙の手形・小切手を全国各地の手形交換所へ物理的に持ち寄って交換していました。

全国銀行協会は2022年11月4日に電子交換所を開始し、紙の手形そのものを銀行間で運搬する代わりに、手形・小切手を画像データ化して交換する方式へ移行しました。これに伴い、各地の物理的な手形交換所は廃止されています。

つまり、

  • 2022年11月4日:全国各地の物理的な手形交換所から電子交換所へ移行
  • 2027年3月31日:電子交換所における紙の手形・小切手そのものの交換を終了

という2段階の変化です。

紙の手形に代わる「でんさい」とは?

紙の手形からの移行先として代表的なのが「でんさい」です。

でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が取り扱う電子記録債権で、紙の証券を発行するのではなく、電子的な記録によって債権を管理します。

紙の手形で行ってきた行為と大まかに対応させると、次のようになります。

紙の手形でんさい
手形を振り出す発生記録を行う
裏書譲渡する譲渡記録を行う
手形を割引するでんさい割引を利用できる場合がある
期日に銀行へ取り立てる支払期日に口座間送金決済

でんさいでは紙の手形と違い、紛失・盗難のリスクや紙の印紙税負担を抑えられ、債権の分割譲渡も可能です。

ただし、利用には金融機関やでんさいサービスの契約・利用条件があります。取引先側でも電子記録債権を受け取れる体制が必要です。

振込へ変更すると「支払日」も見直す必要がある

紙の手形を廃止して銀行振込へ切り替える場合、「今まで120日後の手形だったので、120日後に現金振込へ変えればよい」と単純に考えないことが重要です。

取適法が適用される取引では、物品等の受領日などから起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。

また、公正取引委員会と中小企業庁は2026年9月2日、取適法の対象外を含むサプライチェーン全体についても、約束手形の利用廃止を踏まえた支払サイト短縮を要請しています。

つまり紙を電子化するだけではなく、受注側企業へ過度な資金繰り負担を負わせない支払条件へ見直すことも重要です。

2026年9月時点で紙の手形を持っている場合に確認したいこと

2027年3月の交換終了が迫っているため、現在紙の手形を保有・利用している事業者は早めの確認が必要です。

  • 自社の取引銀行の手形・小切手最終振出期限
  • 他行手形の預金入金・代金取立の最終受付日
  • 手元の受取手形の支払期日
  • 支払期日が2027年4月以降になっていないか
  • 取引先がでんさいに対応できるか
  • 振込へ変更する場合の支払条件
  • 手形割引を利用している場合の代替資金調達方法
  • 手形貸付を利用している場合の証書貸付・当座貸越等への移行

全国銀行協会が公表する一覧では、多くの金融機関が2026年9月30日を最終振出期限としており、この記事の基準日である2026年9月10日時点では、期限まで残された期間は長くありません。

特に取引先から今後受け取る紙の手形については、振出銀行の期限を超えていないかまで確認したほうが安全です。

手形についてよくある誤解を整理

「手形は2026年になった瞬間、すべて使えなくなった」

正確ではありません。2026年1月1日から取適法対象取引で手形払いは禁止されましたが、紙の手形交換そのものは2027年3月31日までの移行期間にあります。

「2026年9月30日にすべての手形が法律上無効になる」

これも正確ではありません。多くの金融機関が9月30日を最終振出期限としていますが、金融機関ごとに取扱条件を確認する必要があります。

「60日以内の手形なら2026年も下請取引で使える」

取適法の対象となる2026年1月1日以後の発注取引では、手形払いそのものが禁止されているため、この理解は現在の制度には合いません。

「紙の手形が廃止されるので手形貸付も全国一律で同じ日に終了する」

手形貸付の対応は銀行によって異なります。すでに取扱いを終了した金融機関もあれば、2027年4月以降を期日とする新規実行を停止する金融機関もあります。

「手形を裏書すれば自社の責任はなくなる」

一般には正しくありません。振出人が支払わなかった場合、所定の要件のもとで裏書人へ遡求される可能性があります。

「手形割引なら額面全額をすぐ受け取れる」

通常は割引料や所定の費用が差し引かれます。適用料率は金融機関や審査条件によって異なります。

手形から電子決済へ移行するときの最終チェック

  • 取引銀行が設定している最終振出期限を確認する
  • 2027年3月31日の紙の手形・小切手交換終了を把握する
  • 取適法対象取引では手形払いが禁止されていることを確認する
  • 単に手形を振込へ置き換えるだけでなく支払サイトも確認する
  • 受取手形の支払期日と銀行の取立受付期限を確認する
  • でんさいを使う場合は取引先と利用環境を確認する
  • 手形割引を資金繰りに使っている場合は代替調達方法を準備する
  • 手形貸付を利用中なら取引銀行の終了スケジュールを確認する
  • 未使用の手形帳・小切手帳の扱いを取引銀行へ確認する

まとめ|2026年は紙の手形から電子決済へ移行する重要な時期

約束手形は、振出人が受取人に対し、将来の一定の日に一定額を支払うことを約束する有価証券です。長年、企業間の信用取引や資金繰りで利用され、受取手形を期日前に資金化する手形割引や、第三者へ譲渡する裏書などの仕組みも発達してきました。

しかし2026年現在、紙の手形を取り巻く環境は大きく変化しています。2026年1月1日から取適法対象取引で手形払いが禁止され、全国銀行協会は2027年3月31日で電子交換所における紙の手形・小切手の交換を終了します。

さらに、多くの金融機関が2026年9月30日を最終振出期限に設定しています。ただし、銀行ごとに期限や取扱内容が異なるため「全国一律で9月30日にすべて無効」と理解しないことが重要です。

手形貸付についても全国一律の廃止日があるわけではなく、銀行ごとに証書貸付や当座貸越などへの移行が進められています。

現在も紙の手形を振り出す・受け取る・割引する・手形貸付を利用している場合は、過去の商慣行をそのまま続けるのではなく、取引銀行の最新スケジュールを確認し、振込やでんさいなどへの切替えを進めることが重要です。

※本記事は2026年9月10日時点で確認できる法令、行政機関、全国銀行協会、金融機関等の公表情報を基にした一般的な解説です。手形・小切手の最終振出期限、取立受付期限、手形貸付・手形割引の終了時期等は金融機関によって異なります。実際の取引では取引銀行および契約内容の最新情報をご確認ください。個別の法律・税務判断が必要な場合は、弁護士、税理士などの専門家へご相談ください。

<参考サイト>
全国銀行協会 / 金融庁 / 公正取引委員会 / 中小企業庁 / 経済産業省 / 国税庁 / e-Gov法令検索 / 日本銀行 / 三菱UFJ銀行 / 三井住友銀行 / みずほ銀行 / りそな銀行 / 株式会社全銀電子債権ネットワーク