
委託保証金の勘定科目と会計処理
法人が事業として信用取引を行う場合、委託保証金は原則として返還を受ける権利があるため、支払手数料などの費用ではなく資産として処理します。
使用される主な勘定科目は次のとおりです。
- 信用取引預け金
- 預け金
- 差入保証金
- 担保差入金
国税庁のe-Tax用勘定科目コードにも、流動資産として「信用取引預け金」が用意されています。どの科目を使用するかは、会社の会計方針や取引の重要性によって異なります。
現金を委託保証金として差し入れた仕訳例
証券会社へ現金30万円を委託保証金として差し入れた場合の簡略化した仕訳例です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 信用取引預け金 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
保証金が返還された場合は、反対の仕訳を行います。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 300,000円 | 信用取引預け金 | 300,000円 |
保証金を預けただけでは、通常、利益や損失は発生しません。売買手数料、金利、貸株料、決済損益などは、それぞれ取引内容に応じた勘定科目で別に処理します。
信用買い・信用売りの会計処理は保証金だけでは完結しない
企業会計基準委員会の金融商品会計に関する実務指針では、信用取引による買付けは、買い付けた有価証券を直ちに担保へ差し入れ、買付代金を証券会社への債務として処理する考え方が示されています。
信用売りでは、借り入れた有価証券と、その売却代金を証券会社への担保差入金として認識します。使用する科目の例は次のとおりです。
- 担保差入有価証券
- 信用取引未払金
- 担保差入金・預け金
- 借入有価証券
- 売買有価証券運用損益
法人の信用取引は、保有目的、決算日の時価評価、ヘッジ会計、税務処理などによって仕訳が複雑になります。重要な金額を取引する場合は、公認会計士や税理士へ確認してください。
委託保証金でよくある誤解
30万円あれば必ず100万円を取引できる?
必ず取引できるわけではありません。評価損、諸経費、未受渡取引、証券会社の独自基準、銘柄規制などによって信用建余力が減少します。
また、30万円は通常の新規建てに必要な最低額であり、安全性を保証する金額ではありません。
保証金率が30%を超えていれば追証は発生しない?
その時点で30%を超えていても、翌営業日の値洗いや代用有価証券の下落によって追証が発生する場合があります。
さらに、委託保証金率とは別に現金不足が発生することがあります。保証金率だけでなく、必要精算額や預り金不足も確認してください。
評価益が出れば信用建余力は必ず増える?
建玉の評価益を委託保証金へ加算しない証券会社では、含み益が増えても保証金率や建余力が同じ割合で増えるとは限りません。
利益を保証金として確定させるには、反対売買による決済と受渡しなどが必要になる場合があります。
代用株を売れば現金不足を解消できる?
代用有価証券を売却すると現金化できますが、売却から受渡しまで時間があります。また、売却した時点で担保評価額が減り、委託保証金率が低下する場合があります。
不足金の期限と売却代金の受渡日が一致しなければ、別途入金が必要になる可能性があります。
建玉を決済すれば追証は必ず消える?
建玉の決済は追証解消方法の一つですが、決済損が確定して現金不足になる場合があります。また、証券会社が定める追証計算方法によっては、決済した金額が即時に全額反映されないことがあります。
必要な決済数量や入金額は、証券会社の画面に表示される解消方法に従ってください。
追証を防ぐためのチェックリスト
- 委託保証金率を毎日確認する
- 当日基準だけでなく翌営業日基準も確認する
- 追証基準より十分に高い保証金率を保つ
- 保証金の上限まで新規建てしない
- 現金保証金と代用有価証券の内訳を確認する
- 代用有価証券の掛目変更を確認する
- 決算発表や重要イベントの日程を確認する
- 信用建玉と代用銘柄を同じ業種へ集中させない
- 金利、貸株料、品貸料の累積を確認する
- 増担保規制や証券会社独自規制を確認する
- 追証と預り金不足を区別する
- 入金期限と受渡日を確認する
委託保証金に関するよくある疑問
委託保証金率は何%なら安全ですか?
絶対に安全な割合はありません。30%は通常の新規建てに必要な最低基準であり、安全基準ではありません。建玉を小さくして保証金率に余裕を持たせても、窓開けや売買停止による損失は起こり得ます。
委託保証金現金が0円でも信用取引できますか?
代用有価証券の評価額などで必要な保証金を満たせば、現金部分が0円でも取引できる場合があります。ただし、現金保証金を必須とする規制銘柄や証券会社独自の制限では取引できません。
委託保証金が30万円を下回ると追証ですか?
直ちに追証になるとは限りません。30万円は主に新規建ての最低保証金額です。追証は、実質保証金が建玉に対する最低維持率を下回ったかどうかで判定されます。
ただし、保証金が30万円未満になると、新たな信用建てができなくなる場合があります。
現物株を担保にすると配当や株主優待は受け取れますか?
代用有価証券として証券会社へ差し入れていても、通常は現物株の株主として配当や株主優待の対象になり得ます。ただし、貸株サービスの利用、権利確定日の保有状況、企業の優待条件などによって扱いが異なります。
追証は入金すれば必ず解消しますか?
証券会社が指定した金額を期限までに入金し、必要条件を満たせば解消できます。ただし、相場の変動や費用の追加によって必要額が増える場合があります。入金後も追証表示が消えたことを確認してください。
信用取引の損失は保証金の範囲内ですか?
保証金の範囲内に限定されません。急激な相場変動や強制決済の遅れによって、損失が差し入れた保証金を超える場合があります。
委託保証金は消費税の対象ですか?
返還を前提として差し入れる委託保証金そのものは、商品やサービスの対価ではないため、通常は消費税の課税対象になりません。一方、証券会社へ支払う売買手数料などは、役務提供の対価として消費税が含まれる場合があります。
まとめ:委託保証金率だけでなく現金不足と受渡日も確認しよう
委託保証金とは、信用取引を行うために証券会社へ差し入れる担保です。現金だけでなく、証券会社が認める株式や投資信託などを代用有価証券として利用できます。
通常の国内信用取引では、新規建ての約定価額に対して30%以上、かつ最低30万円の委託保証金が必要です。ただし、証券会社独自の基準、レバレッジ型商品、増担保規制銘柄では、より高い保証金率や現金保証金が求められます。
委託保証金率は、現金と代用有価証券の評価額から、建玉評価損、諸経費、決済損益などを調整した実質保証金を、建玉代金で割って計算します。建玉の評価損だけでなく、代用有価証券の値下がりによっても低下する点が重要です。
委託保証金現金が0円でも、代用有価証券で必要額を満たしていれば、必ずしも異常ではありません。一方、マイナス表示は決済損や買付代金などによる現金不足の可能性があるため、預り金不足額と入金期限を確認してください。
追証が発生した場合は、株価が戻ることだけを期待せず、証券会社が指定する金額、解消方法、期限を確認する必要があります。期限までに解消できなければ強制決済され、保証金を超える損失が残る可能性があります。
本記事は、国内株式の信用取引および委託保証金に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の証券会社、銘柄、金融商品、取引方法を推奨するものではありません。信用取引には価格変動、信用、流動性、金利、貸株料、追証、強制決済などのリスクがあり、差し入れた委託保証金を超える損失が発生する可能性があります。実際の取引では、利用する証券会社の信用取引規程、契約締結前交付書面、保証金率、追証期限、手数料を確認し、ご自身の資産状況、経験、目的、損失許容度に基づいて判断してください。
<参考サイト>
日本取引所グループ(JPX) / SBI証券 / 日本証券業協会 / 金融庁 / 企業会計基準委員会(ASBJ) / 国税庁(e-Tax)




