
億り人のポートフォリオに正解はある?
億り人に共通する「正解のポートフォリオ」や公式な平均資産配分はありません。
必要な配分は、年齢、収入、生活費、家族構成、住宅ローン、投資期間、価格下落に耐えられる金額などによって異なります。
J-FLECも、ポートフォリオは本人のリスク許容度を考えて決める必要があり、ライフスタイルの変化に応じて見直すことが重要だと案内しています。
銘柄より先に「資産の役割」を決める
1億円を運用するときも、最初から「どの株を何%買うか」と考えるより、資産の目的を分けるほうが整理しやすくなります。
| 資産の役割 | 代表的な選択肢 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 近く使う資金 | 預貯金など | インフレによる実質価値低下など |
| 長期成長を目指す資金 | 国内外の株式・株式投資信託など | 価格変動 |
| 値動きを抑える目的の資産 | 債券・預貯金など | 金利・信用・インフレ等 |
| 分散を広げる資産 | 不動産投資信託など | 不動産価格・金利等 |
金融庁も、国内・海外、株式・債券・不動産など値動きの異なる資産へ分散することで価格変動をある程度抑える考え方を紹介しています。
億り人はどんな銘柄を持っている?「億り人銘柄ランキング」は存在しない
日本の億り人全体がどの個別株を何%保有しているかを示す信頼できる公的統計はありません。
NRIの「いつの間にか富裕層」調査では、従業員持株会、確定拠出年金、NISAなどを通じた運用資産の値上がりによって純金融資産1億円以上になった例が確認されています。
ただし、特定企業の株式だけで資産が増えた場合、そのまま保有し続けると一つの銘柄に資産が偏ることがあります。
「1億円を作った銘柄」と「1億円を守りながら保有するためのポートフォリオ」は同じである必要はありません。
億り人から転落する理由1|集中投資した資産が下落する
1億円を達成しても、その大半が値動きの大きい一つの資産なら、億り人の状態は簡単に変わります。
例えば資産1億円がすべて同じリスク資産で、価格が50%下落すれば、
1億円 × 50% = 5,000万円
になります。
20%下落でも8,000万円です。
資産が1億円を超えた瞬間にリスクが消えるわけではありません。
億り人から転落する理由2|レバレッジによって損失が拡大する
借入れや証拠金を利用したレバレッジ取引では、自己資金だけで取引する場合より損益が大きく動く可能性があります。
短期間で資産が増えた方法を1億円達成後も同じ規模で続ければ、反対方向へ価格が動いたときの損失額も大きくなります。
「一度成功した手法だから今後も同じ利益が出る」とは限りません。
億り人から転落する理由3|税金分まで再投資してしまう
特に暗号資産では、利益を確定した年に大きな税負担が発生していても、その資金を別の暗号資産へ再投資してしまうと問題になることがあります。
翌年に価格が急落しても、前年分の納税義務が自動的になくなるわけではありません。
そのため大きな利益を確定した場合は、税額を試算し、納税資金を値動きの大きい資産とは分けて確保することが重要です。
億り人から転落する理由4|生活水準を一気に上げる
資産1億円は大きな金額ですが、無制限に使える金額ではありません。
例えば運用益を一切考えず、税金・社会保険料・物価上昇なども無視して単純に1億円を取り崩すとします。
| 年間生活費 | 1億円が持つ単純年数 |
|---|---|
| 300万円 | 約33.3年 |
| 400万円 | 25年 |
| 500万円 | 20年 |
| 600万円 | 約16.7年 |
実際には資産を運用しながら取り崩すケースもありますが、運用収益は保証されません。またインフレによって将来の生活費が上昇する可能性もあります。
1億円あればアーリーリタイアできる?
1億円あれば誰でも安全にアーリーリタイアできる、とはいえません。
必要資産は少なくとも、
- 現在の年齢
- 年間生活費
- 住宅費
- 子どもの教育費
- 公的年金を受け取るまでの期間
- 退職後の健康保険・年金等の負担
- 医療・介護への備え
- インフレ率
- 運用資産の価格変動
- 税金
によって大きく異なります。
「1億円×4%=年400万円なら永久に使える」は保証されない
海外の資産運用研究を基に、年間一定割合を取り崩す考え方が紹介されることがありますが、将来の日本で同じ結果になる保証はありません。
税制度、為替、インフレ、投資商品の収益率、退職期間が異なるためです。
アーリーリタイアを検討するときは、一つの固定率だけでなく、資産が大幅に下落するケースや長生きするケースも含めて試算する必要があります。
億り人になった後は「資産を増やす」から「守って使う」へ
資産形成中と1億円達成後では、目的が変わる場合があります。
まだ資産が少ない時期は給与等から新しい資金を積み立てられますが、アーリーリタイア後は資産から生活費を取り崩す側になるためです。
例えば株式市場が大幅下落している時期に、生活費のために大量の株を売却すると、その後相場が回復しても保有資産が少なくなっているという問題が起こります。
そのため、リタイア後は資産総額だけでなく、近い将来に使う資金と長期運用する資金を区別することが重要になります。
億り人の資産推移は一直線ではない
長期投資では、毎年同じ割合で資産が増えることはありません。
例えば1億円に到達した翌年に20%値下がりすれば8,000万円になり、その後25%上昇してようやく1億円へ戻ります。
1億円 × 80% = 8,000万円
8,000万円 × 125% = 1億円
「20%下がったあと20%上がれば元通り」ではない点にも注意が必要です。
資産推移を見る際は、一時的な最高額ではなく、長期的な純資産の変化を確認するほうが実態を把握しやすくなります。
億り人になるための現実的な順序
- 家計の収支を把握する
- 生活に必要な資金と投資資金を分ける
- 高金利の負債があれば返済も検討する
- 長期的に積み立てられる金額を決める
- NISAなど利用できる非課税制度を確認する
- 一つの資産・国・銘柄へ過度に集中しない
- 定期的にポートフォリオを見直す
- 資産が増えても投資額を急激に拡大しない
- 利益確定時は税額を把握する
- 1億円達成後の生活費・資産保全も計画する
短期間で大きく増やす方法を探すより、長期間投資市場から退場せず、収入から投資できる金額を継続的に確保する考え方のほうが、金融庁やJ-FLECが示す長期的な資産形成の基本にも合っています。
億り人になるための「本」は何を選ぶ?
億り人に関する本を読む場合、「○年で1億円」「この銘柄だけ買えばよい」といった成功談だけでなく、統計・税金・分散投資・資産取り崩しまで扱っているかを確認すると有益です。
2025年12月には、NRIの研究者による『「いつのまにか富裕層」の正体』が日経BP 日本経済新聞出版から刊行されています。NRIの富裕層調査を基に、一般会社員などが資産形成によって富裕層へ移行した背景を扱った書籍です。
一方、個人投資家の成功体験を書いた本は、その本人が成功した時期・銘柄・相場環境に大きく左右されます。成功例をそのまま再現できる保証はありません。
「億り人になるには」銘柄探しより確認したい5つの数字
1億円を目指す場合、特定の銘柄名より先に次の数字を把握すると、必要な行動が具体的になります。
- 現在の純金融資産:金融資産から負債を引いた金額
- 年間投資可能額:生活費を除いて継続的に積み立てられる金額
- 目標期間:何歳までに1億円を目指すか
- 許容損失額:どの程度の値下がりまで保有を継続できるか
- 年間生活費:1億円達成後に資産からいくら使うか
これらを確認すると、「高騰する銘柄を当てなければ1億円になれない」という考え方だけではないことが分かります。
億り人についてよくある誤解
「日本人の約3%が億り人」
正確ではありません。約3%という数字は、NRIの2023年推計における純金融資産1億円以上の世帯割合を計算したものです。投資で1億円を築いた個人の割合ではありません。
「1億円の株を持っていれば税引後も1億円」
取得価格より値上がりしている課税口座の株式を売却すれば、譲渡益に税金が発生します。含み益が大きいほど売却後の手取り額は時価総額より少なくなる可能性があります。
「仮想通貨も2026年から一律20%になった」
2026年9月10日時点ではまだ現行の総合課税が基本です。20%の申告分離課税へ移行する改正は法制化されていますが、適用開始には金融商品取引法改正の施行時期が関係します。
「1億円あれば一生働かなくてよい」
年間生活費、年齢、インフレ、公的年金、運用成果によって異なります。1億円を年間500万円ずつ単純に使えば、運用益・税金・物価変動を無視しても20年です。
「億り人のポートフォリオをコピーすれば同じ結果になる」
購入時期・価格・収入・投資期間・リスク許容度が違うため、同じ銘柄を保有しても同じ成果になる保証はありません。
「2017年に仮想通貨の億り人が正確に331人誕生した」
国税庁資料の331人は「暗号資産で1億円の利益を得た人」の数ではありません。雑所得の収入金額が1億円以上だった人のうち、暗号資産取引による収入が判別できた申告者数です。
億り人を目指す・維持するときのチェックリスト
- 「資産1億円」と「利益1億円」を区別しているか
- 負債を引いた純金融資産を確認しているか
- 含み益に将来発生し得る税金を把握しているか
- NISAなど非課税制度を適切に利用しているか
- 一つの株・暗号資産へ過度に集中していないか
- レバレッジによる損失拡大を理解しているか
- 暗号資産の納税資金を確保しているか
- 毎月の投資可能額を継続的に確保できるか
- 資産配分を定期的に見直しているか
- 1億円達成後の年間生活費を計算したか
- 相場下落時にも生活できる資金計画があるか
- 成功者の銘柄だけをそのまま模倣していないか
まとめ|億り人の本当の基準は「1億円を作った後」に見えてくる
億り人とは、一般に株式や暗号資産などの投資によって億単位の資産を築いた投資家を意味する俗語で、読み方は「おくりびと」です。法律上の正式な定義はありません。
日本で億り人が何人いるかを正確に示す統計もありませんが、NRIの2023年推計では純金融資産1億円以上の富裕層・超富裕層は合計165.3万世帯です。全5階層の世帯数から計算すると約2.97%ですが、これは個人の億り人数ではなく世帯単位の富裕層統計です。
億り人になる年齢にも全国平均はありません。NRIが近年注目している「いつの間にか富裕層」では40代後半から50代の一般会社員が多く、持株会、確定拠出年金、NISAなどを通じて長期間保有していた資産が増えたケースが確認されています。
税金は資産の種類によって大きく異なります。2026年の上場株式等の譲渡益は原則20.315%ですが、暗号資産取引の利益は2026年9月10日時点では原則雑所得で総合課税です。暗号資産を20%の申告分離課税とする改正は決まっていますが、2026年分の利益に適用される制度ではありません。
また、1億円に到達しても資産の大半を一つの銘柄・暗号資産に集中させていれば、大幅下落によって短期間で1億円を割る可能性があります。1億円を年間500万円ずつ使えば、運用益・税金・インフレを無視した単純計算でも20年です。
億り人になることを最終目的にするより、「純金融資産を継続的に増やす」「致命的な損失を避ける」「税金を把握する」「1億円になった後も生活を維持できる資産配分を作る」という4点を重視することが、長期的な資産形成では重要です。
※本記事は2026年9月10日時点で確認した税制、金融制度、富裕層統計、行政機関・専門機関等の公表情報を基にした一般的な情報提供を目的としています。特定の株式、投資信託、暗号資産等の購入を推奨するものではなく、1億円への到達や将来の運用成果を保証するものではありません。シミュレーションは一定の仮定を置いた参考計算であり、実際の投資では元本割れの可能性があります。税務上の取扱いは所得・取引方法等により異なる場合があるため、具体的な確定申告については国税庁・税務署または税理士等へご確認ください。
<参考サイト>
国税庁 / 金融庁 / 財務省 / 内閣府 税制調査会 / 野村総合研究所(NRI) / J-FLEC 金融経済教育推進機構 / 野村證券 / 衆議院




