
中小企業ならiDeCo+も資産形成支援の候補
iDeCo+(イデコプラス)の正式名称は「中小事業主掛金納付制度」です。
企業型DC、確定給付企業年金、厚生年金基金などの企業年金を実施していない、厚生年金被保険者300人以下の企業が利用できる制度です。
従業員自身が加入しているiDeCoの掛金に、事業主が掛金を上乗せします。
2026年9月10日時点では、従業員の加入者掛金と事業主掛金を合わせて、原則月額5,000円以上2万3,000円以下の範囲で設定します。
なお2026年12月分以降はDC拠出限度額改正に伴う変更が予定されており、国民年金基金連合会では2026年7月から事業主掛金増額の事前受付も案内しています。
iDeCo+の企業側の税制メリット
厚生労働省・iDeCo公式サイトによると、企業が負担するiDeCo+の事業主掛金は全額を損金に算入できます。
ただし「会社が掛金を支払えば、その同額だけ税金が減る」という意味ではありません。掛金を損金として課税所得計算へ反映する仕組みです。
iDeCo+にも労使合意が必要
iDeCo+を導入する場合、厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は過半数代表者の同意が必要です。
事業主掛金額を変更する場合にも所定の同意が必要になります。
財形貯蓄も国と事業主による資産形成支援制度
財形貯蓄は、給与からの天引きによって従業員が定期的に積み立てる制度です。
厚生労働省は「勤労者財産形成促進制度」として、働く人の財産形成を国と事業主が支援する制度と位置付けています。
主な種類は、
- 一般財形貯蓄
- 財形住宅貯蓄
- 財形年金貯蓄
です。
財形住宅・財形年金には利子非課税制度がある
一定の要件を満たす財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄では、両方を合わせて原則元利合計550万円までから生じる利子等について非課税制度があります。
ただし、拠出した金額そのものを所得から控除するiDeCoとは仕組みが違います。
また、住宅・年金という目的を外れて払い出した場合は、原則として一定期間さかのぼって利子等に課税されることがあります。
財形給付金制度なら会社から資産形成を後押しできる
財形貯蓄をしている従業員への支援として、財形給付金制度もあります。
厚生労働省によると、事業主が労使合意に基づき、従業員1人につき毎年最高10万円まで拠出し、原則7年経過ごとに元利合計額を従業員へ給付する仕組みです。
事業主の拠出金は損金または必要経費となり、拠出時点で従業員に所得税を課さない税制上の取扱いがあります。
職場つみたてNISAの奨励金とは税務上の扱いが異なる点に注意しましょう。
中小企業退職金共済は「資産形成支援+退職金制度」
中小企業で退職金制度の整備を重視する場合は、中小企業退職金共済制度(中退共)も候補になります。
事業主が毎月掛金を支払い、従業員が退職した際に勤労者退職金共済機構から退職金が直接支給されます。
中退共の掛金は全額事業主負担であり、従業員へ負担させることはできません。
中退共には国の掛金助成がある
2026年9月時点の制度では、新たに中退共へ加入する一定の事業主に対し、加入後4か月目から1年間、
掛金月額の2分の1・従業員1人につき月5,000円を上限
として国が助成します。
つまり通常の加入者については最大で、
5,000円×12か月=6万円
の国の助成となります。
短時間労働者の特例掛金には一定の上乗せ助成もあります。
さらに、掛金月額1万8,000円以下の従業員について掛金を増額する場合には、一定の要件で増額分の3分の1を1年間助成する制度があります。
自治体や事業主団体が独自の掛金補助制度を実施している地域もあります。
資産形成支援に使える公的補助金・助成金は?
「会社が職場NISAを導入すれば国から○万円もらえる」といった全国一律の制度があるわけではありません。
2026年9月10日時点で、金融庁・厚生労働省などの主要制度を確認する限り、職場つみたてNISAを導入したすべての企業へ一律に支給される全国共通の導入補助金は確認できません。
また、iDeCo+の事業主掛金も、国から会社へ支給される補助金ではなく、会社自身が負担する掛金です。
一方、資産形成・福利厚生に関連して企業が利用できる公的支援には次のようなものがあります。
| 支援 | 2026年時点の内容 |
|---|---|
| J-FLEC講師派遣 | 金融経済教育の講義料・講師交通費・宿泊費をJ-FLECが負担 |
| 中退共新規加入助成 | 一定の事業主について掛金の一部を国が助成 |
| 中退共増額助成 | 一定条件で掛金増額分の一部を国が助成 |
| 自治体の中退共助成 | 実施地域・金額・期間は自治体等によって異なる |
| 財形制度 | 財形住宅・年金の利子非課税等、税制面の支援 |
| 賃上げ促進税制 | 一定要件を満たす企業について給与増加額等を基に税額控除 |
職場つみたてNISA奨励金は賃上げ促進税制に関係する?
国税庁は、職場つみたてNISAの奨励金について、所得税法上の給与等に該当し、賃上げ促進税制における「給与等」に該当するとの照会回答を公表しています。
ただし、奨励金を出せばそのまま賃上げ促進税制の税額控除を受けられるわけではありません。
賃上げ促進税制には事業者区分、給与増加率などの要件があるため、実際の適用は最新制度で確認する必要があります。
従業員が受ける「節税効果」は制度ごとに違う
| 制度 | 従業員側の主な税制 |
|---|---|
| 職場つみたてNISA | NISA内の対象運用益・配当等が非課税。企業の奨励金は給与所得 |
| 企業型DC・事業主掛金 | 掛金拠出時には従業員への給与課税なし |
| 企業型DC・マッチング拠出 | 本人掛金は小規模企業共済等掛金控除 |
| iDeCo本人掛金 | 全額が小規模企業共済等掛金控除 |
| 財形住宅・財形年金 | 一定限度まで利子等が非課税 |
「資産形成支援制度ならすべて給与より税金が安い」とまとめることはできません。
特に職場つみたてNISAの会社奨励金と企業型DCの事業主掛金では、拠出時の税務が異なります。
企業側にとっての資産形成支援のメリット
企業側では、従業員の長期的な生活設計を支える福利厚生を用意できる点が大きな特徴です。
想定されるメリットには、
- 福利厚生メニューを充実できる
- 退職後を含めた従業員の資産形成を支援できる
- 金融経済教育を提供する機会を作れる
- 企業型DC・iDeCo+などでは税制上の取扱いを活用できる
- 採用時に福利厚生制度として説明できる
などがあります。
ただし、「資産形成制度を導入すれば離職率が必ず○%下がる」といった成果を保証できる制度ではありません。
実は制度を作るだけでは十分ではありません。企業型DCには投資教育に関する事業主の責任があり、給与天引き型の制度では労使協定も重要です。最後に導入実務と無料で使える金融教育支援まで確認します。





