
信用取引の保証金維持率とは
保証金維持率とは、保有している信用建玉に対して、現在の実質的な保証金がどの程度残っているかを示す割合です。
単純化すると、次のような考え方で計算されます。
保証金維持率=実質保証金額÷信用建玉金額×100
実際の計算では、信用建玉の評価損、確定した損失、金利や各種費用などが保証金から差し引かれます。評価益は、評価損と同じように無条件で保証金へ加算されるとは限りません。
保証金維持率が下がる主な原因
- 信用買いした銘柄の株価が下落した
- 空売りした銘柄の株価が上昇した
- 代用有価証券の株価が下落した
- 返済した取引で損失が確定した
- 金利、貸株料、逆日歩などの費用が増えた
信用買いした銘柄と代用有価証券に同じ銘柄や同じ業種を利用していると、相場下落時に両方の価値が同時に下がるおそれがあります。
追証とは?発生するタイミングを解説
追証とは「追加保証金」の略称です。証券会社が定める最低保証金維持率や最低保証金額を下回ったときに、不足分の入金や建玉の返済を求められます。
追証の判定水準、発生時刻、解消期限、建玉返済による解消方法は証券会社ごとに異なります。口座を開設した証券会社のルールを必ず確認してください。
楽天証券の追証ルールの例
楽天証券では、信用建玉を保有している間、毎営業日の大引け時点で委託保証金率を計算します。委託保証金率が20%を下回るか、委託保証金が30万円を下回ると、追証が発生します。
発生した追証は、原則として発生日の翌々営業日12時までに、入金、代用有価証券の振替、建玉の返済などで解消する必要があります。
また、保証金率が前場引けや大引け時点で10%を下回った場合には、追証の請求を待たずに建玉が決済される場合があります。
出典:楽天証券「信用取引の基本ルール」「信用取引で追加保証金が発生したら」
追証を放置するとどうなる?
期限までに追証を解消できない場合、証券会社は建玉を利用者の意思にかかわらず反対売買することがあります。これが強制決済です。
強制決済後も損失を補えない場合は、不足金を別途入金しなければなりません。追証は「建玉を手放せば終わり」とは限らず、最終的に証券会社への債務が残る可能性があります。
追証を避けるための対策
- 最大取引可能額まで建玉を持たない
- 保証金維持率に十分な余裕を持たせる
- 損失を限定する返済注文を検討する
- 代用有価証券と信用建玉を同じ銘柄に集中させない
- 金利や逆日歩を含めて保有期間を管理する
- 証券会社からのメールや口座内通知を毎日確認する
保証金率が低下してから入金を考えるのではなく、取引を始める段階で最大損失額と撤退水準を決めておくことが重要です。
信用取引の配当金はどうなる?
信用買いで建てている株式は、利用者名義の現物株として保有しているわけではありません。そのため、企業から通常の配当金を直接受け取るのではなく、証券会社を通じて「配当落調整金」または「配当金相当額」を受け取ります。
反対に、信用売りの建玉を配当の権利確定日をまたいで保有すると、配当落調整金を支払うことになります。
信用買いで受け取るのは配当金ではない
配当落調整金は、信用買いと信用売りの当事者間で、配当による株価下落分を調整するための金銭です。企業が株主に支払う配当金とは法的・税務上の性質が異なります。
信用買いでは、実際の配当金から税相当額を差し引いた金額が交付されるのが一般的です。一方、一般信用の売建てでは、証券会社のルールにより配当金の税引前相当額を支払う場合があります。
具体的な授受額や時期は、制度信用か一般信用か、利用する証券会社のルールによって異なります。
株主優待や議決権は得られない
信用買いをしていても、原則として株主名簿上の株主にはならないため、株主優待や議決権は得られません。株主としての権利を取得するには、権利付き最終日までに現物株を保有するなど、所定の条件を満たす必要があります。
信用取引の税金と確定申告
国内の上場株式に関する信用取引の利益は、原則として上場株式等の譲渡所得等として申告分離課税の対象になります。
税率は、所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%です。
出典:国税庁「株式等を譲渡したときの課税」「特定口座制度」
確定申告が原則不要になるケース
信用取引を特定口座の「源泉徴収あり」で行っている場合、証券会社が年間の損益計算と源泉徴収を行うため、原則として確定申告は不要です。
ただし、複数の証券会社の損益を通算したい場合や、損失を翌年以降へ繰り越したい場合などは、確定申告が必要になります。
損失が出た場合の損益通算
信用取引で生じた損失は、一定の条件を満たせば、他の上場株式等の譲渡益や申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得と損益通算できます。
通算しても控除しきれない損失は、確定申告を継続して行うことで、翌年以後3年間にわたって繰り越せる制度があります。
確定申告の要否は、口座区分、配当の申告方法、他社口座の損益、給与以外の所得などによって変わります。判断が難しい場合は、税務署や税理士へ確認してください。
配当落調整金の税務上の扱い
信用買いで受け取る配当落調整金は、通常の配当所得として扱うのではなく、信用取引に関する取得価額の調整として計算されます。
信用売りで支払った配当落調整金は、譲渡収入の調整として扱われます。そのため、現物株の配当金と同じように配当控除を利用できるものではありません。
出典:国税庁「信用取引等に係る譲渡益の計算」「信用取引に係る配当落調整額等」
信用取引初心者が始める前に確認したいこと
まず現物取引との違いを理解する
信用取引は、現物取引の購入可能額が増えるだけの仕組みではありません。返済期限、金利、追証、逆日歩、強制決済など、現物取引にはないルールがあります。
最初から約3倍の取引をしない
最大取引可能額は、利用を推奨する金額ではありません。30万円の保証金で約100万円分の建玉を持つと、わずかな株価変動でも保証金維持率が大きく変化します。
初心者は、現物取引と同程度の金額から始める、建玉を分散させる、損失額の上限を決めるなど、レバレッジを抑えた使い方が考えられます。
発注前に返済期限と総コストを確認する
注文画面では「制度」「一般無期限」「短期」「日計り」などの区分を選ぶことがあります。同じ銘柄でも区分を間違えると、返済期限や貸株料が変わるため注意が必要です。
特に空売りでは、逆日歩や特別空売り料を含め、保有日数に応じてどの程度の費用が発生するか確認しておきましょう。
まとめ:信用取引は利益より先に損失管理を考える
信用取引は、証券会社から資金や株式を借りることで、手元資金以上の取引や空売りができる仕組みです。資金効率を高められる一方で、保証金を超える損失、追証、強制決済、金利、貸株料、逆日歩などのリスクがあります。
制度信用と一般信用では、対象銘柄、返済期限、逆日歩の有無が異なります。SBI証券や楽天証券では条件を満たすと売買手数料が0円になりますが、金利や貸株料まで無料になるとは限りません。
信用取引を利用する際は、最大でいくら利益を得られるかよりも、相場が逆に動いたときにいくら損失が出るか、保証金維持率がどこまで低下するかを先に計算することが重要です。仕組みや費用を十分に理解できない段階では、無理に信用取引を利用せず、現物取引を優先する選択肢もあります。
<参考サイト>東京証券取引所(JPX)/国税庁/金融庁/SBI証券/楽天証券




