私募とは?公募との違い・私募債・私募ファンド・私募REIT・税金までわかりやすく解説

私募は節税になる?「私募=節税制度」ではない

私募そのものは節税制度ではありません。

「私募」は有価証券の勧誘方法を表す言葉であり、税金を減らすことを目的として設けられた制度ではありません。

私募債を発行する会社側では、社債利息や発行のために直接支出した一定の費用が会計・税務上の費用となる場合がありますが、会社から現金が出ていく実際のコストでもあります。

「100万円の利息を払えば税金が減るから得」というものではなく、税負担の減少額より会社から支払う利息のほうが大きいのが通常です。資金調達の必要性と税務効果は分けて判断しましょう。

同族会社が「役員向け私募債」を発行すれば節税できる?

特に注意したいのが、同族会社が経営者やその親族などへ社債を発行し、会社から利息を受け取る方法を「節税策」として単純に紹介する情報です。

国税庁によると、特定公社債以外の公社債の利子のうち、同族会社が発行した社債の利子を、その同族会社の判定の基礎となる一定の株主やその親族等が受け取る場合には総合課税の対象となります。

また一定の法人株主と特殊な関係にある個人やその親族等が受け取る社債利子にも総合課税となる規定があります。

「会社から給与ではなく私募債利息として受け取れば、一律20.315%で課税が終わる」と一般化することはできません。

個人が私募債の利息を受け取った場合の税金

公社債の利子は所得税上、基本的に利子所得です。ただし、社債が「特定公社債」に該当するか、それ以外の一般公社債等に該当するか、同族会社の一定の株主等が受け取るかによって課税方法が異なります。

国税庁によると、特定公社債以外の公社債などの利子は、一定の場合を除き20.315%の源泉分離課税となります。一方、前述した同族会社の一定の株主等が受け取る社債利子は総合課税になる場合があります。

そのため「私募債なら確定申告不要」「私募債なら必ず総合課税」というどちらの説明も一律には正しくありません。発行会社、保有者との関係、社債の種類を確認する必要があります。

私募ファンドで節税できる?ファンドの形によって税務が違う

私募ファンドについても「投資すれば節税できる」という共通ルールはありません。

例えば匿名組合、任意組合、投資事業有限責任組合、投資法人、投資信託などでは課税方法が違います。

匿名組合の利益分配

国税庁の所得税基本通達では、個人の匿名組合員が営業者から受ける匿名組合契約に基づく利益の分配は、原則として雑所得とされています。ただし、営業者と共同して事業を経営していると認められる場合などには取扱いが異なります。

任意組合・投資事業有限責任組合

任意組合等では、組合事業から生じる利益・損失が各組合員へ帰属するという税務上の考え方があります。

実際に現金の分配を受けていない時点でも所得計算が必要になる場合があるため、「分配金を受け取るまで税金は発生しない」とは限りません。

私募REITなど投資法人の分配金

投資法人から個人が受ける金銭の分配は所得税上、配当所得に該当します。ただし、投資法人からの分配は配当控除の対象外とされるなど、一般的な国内株式配当と異なる税務上の取扱いがあります。

私募ファンドの確定申告はどうする?

確定申告が必要かどうかは、ファンドの法的形態、投資家が個人か法人か、利益の種類、源泉徴収の有無などによって変わります。

例えば匿名組合の個人投資家なら原則雑所得となりますが、私募債利息なら利子所得、投資法人からの分配金なら配当所得といった違いがあります。

したがって「私募ファンドの利益は全部雑所得」「全部20.315%」など一つの税率・所得区分で処理することはできません。

私募商品は公募商品より税務資料の読み方が複雑になる場合もあるため、投資前に募集資料・契約書に記載された法的スキームと税務上の取扱いを確認しましょう。

私募債の勘定科目は?発行会社では原則「社債」

会社が私募債を発行して資金を調達した場合、発行会社では通常、負債として「社債」を計上します。

例えば1,000万円の私募債を額面どおり発行し、銀行口座へ1,000万円が入金された単純な例では、概念上は次のような仕訳になります。

借方金額貸方金額
普通預金10,000,000円社債10,000,000円

私募債の利息を支払ったとき

社債の利息は一般に「社債利息」などの営業外費用として処理します。

社債利息○○円普通預金等○○円

実際には源泉徴収、未払利息、決算日をまたぐ期間計算などが関係する場合があります。

私募債の発行手数料は「社債発行費」になる場合がある

企業会計基準委員会の実務対応報告では、社債発行のため直接支出した金融機関・証券会社の取扱手数料、広告費、印刷費、登録免許税などを「社債発行費」としています。

会計上、社債発行費は原則として支出時に営業外費用として処理します。ただし、繰延資産として計上し、社債の償還までの期間にわたり償却することもできます。

銀行保証付私募債の保証料などについて具体的にどの勘定科目を使用するかは、契約内容や自社の会計方針によって確認する必要があります。

私募債を発行すると会社の信用力が証明される?

銀行保証付私募債は銀行所定の審査を経て発行されるため、金融機関によっては「一定の基準を満たした企業」であることを商品の特徴として案内しています。

ただし、私募債を発行した会社だから将来倒産しない、投資しても元本割れしないという意味ではありません。

企業の財務状況は発行後にも変化します。投資家側から見れば、銀行保証の範囲、保証会社、償還条件、期限前償還条項などを確認する必要があります。

私募ファンド投資で確認したいチェックポイント

  • 金融商品取引業者としての登録または必要な届出が確認できるか
  • 何に投資するファンドなのか
  • 元本保証の有無を正しく理解しているか
  • 途中解約・持分譲渡ができるか
  • 運用期間は何年か
  • 管理報酬・成功報酬等はいくらか
  • 借入れによるレバレッジを利用しているか
  • 基準価額・資産評価はどの頻度で行うか
  • 分配金の原資は何か
  • 税務上どの所得区分になるか
  • 確定申告に必要な資料を受け取れるか

私募債発行で確認したいチェックポイント

  • 少人数私募・適格機関投資家私募など、どの制度を利用するのか
  • 金融商品取引法上の募集・開示規制を確認したか
  • 発行金額と償還期間は資金計画に合っているか
  • 満期一括償還か定時償還か
  • 表面金利はいくらか
  • 銀行保証料・発行手数料を含む総コストはいくらか
  • 銀行保証付の場合、適債基準・審査条件を満たすか
  • ほふりの一般債振替制度を利用するか
  • 満期時の償還資金を準備できるか
  • 社債発行費・社債利息の会計処理を確認したか

私募についてよくある誤解

「49人までなら何を販売しても自由」

誤りです。少人数私募には人数以外にも条件があり、ファンドの販売・運用には金融商品取引業の登録や届出が必要となる場合があります。

「私募債なら銀行融資より必ず金利が低い」

一律にはいえません。表面金利に加え、銀行保証料や発行手数料なども比較する必要があります。

「私募ファンドは富裕層なら誰でも買える」

商品・私募制度によって投資家要件が異なります。資産が多いだけで、すべてのプロ向け私募商品を自由に購入できるわけではありません。

「私募REITは市場で価格が動かないので安全」

非上場であるため上場市場の日々の売買による価格変動はありませんが、不動産評価額、賃料、空室率、金利、借入れなどの影響を受けます。払戻しにも制限があります。

「私募債を社長が買えば簡単に節税できる」

同族会社の一定の株主やその親族等が自社の社債利息を受け取る場合、総合課税となる税制があります。「給与より必ず税率が低くなる」と一般化することはできません。

まとめ|私募は「限られた相手への資金調達・投資」。公募より簡単=低リスクではない

私募とは、有価証券を不特定多数へ広く募集する公募とは異なり、人数や投資家属性など一定の条件のもとで行う取得勧誘です。少人数私募、適格機関投資家私募、特定投資家私募などがあり、それぞれ要件が異なります。

私募債は、少数の投資家を対象として会社が発行する社債です。銀行保証付私募債や信用保証協会保証付私募債では、金融機関等の審査を受けたうえで、長期固定金利などによる資金調達ができる商品があります。

ただし、私募債の金利・発行手数料には全国共通の相場がありません。銀行借入と比較するときは、金利、保証料、発行関連費用、償還方式を合計した総調達コストを見る必要があります。

私募ファンドも商品ごとの差が大きく、匿名組合、組合型ファンド、投資法人などによって投資資格や税務が変わります。私募REITは非上場であるため上場J-REITより市場価格の影響を受けにくい一方、換金性や情報開示などでは異なる特徴があります。

また、私募や私募債はそれ自体が節税制度ではありません。同族会社が一定の株主等へ支払う社債利息が総合課税になるなど、節税を目的とした単純な利用を防ぐ税務上のルールもあります。

私募を利用する企業・投資家のどちらにとっても、「私募だから手続が簡単」「プロ向けだから安全」と考えるのではなく、法的な私募区分、発行・運用主体、コスト、換金性、信用リスク、税務を個別に確認することが重要です。

※本記事は2026年9月10日時点で確認できる金融商品取引法上の制度、税制、会計基準、金融機関・専門機関等の公表情報を基にした一般的な解説です。私募・私募債・私募ファンドの法的取扱い、投資資格、金利、保証料、発行条件、税務は個別のスキームによって異なります。具体的な私募の実施については弁護士・金融商品取引法の専門家・金融機関等、税務については税務署または税理士、会計処理については公認会計士等へご確認ください。

<参考サイト>
金融庁 / 証券取引等監視委員会 / 日本証券業協会 / 国税庁 / 企業会計基準委員会 / 不動産証券化協会 / 証券保管振替機構 / 三菱UFJ銀行 / りそな銀行 / 群馬銀行 / 足利銀行